世界の名歌手がまた一人お亡くなりになりました。イレアナ・コトルバシュ。2026年8月20日、母国ルーマニアのブカレストで没。ルーマニア出身の屈指のソプラノでした。なんといっても有名なのは椿姫のヴィオレッタですか、ボエームのミミですか。
カルロス・クライバーの椿姫(相方はドミンゴ)の、あのジャケットは多くの皆様がよくご記憶されていることでしょう。豪快というより繊細な声、表現力、演技力。とはいえ弱いわけでは決してなく、揺るぎない芯の強さがあり、それが人の心にささったのであります。
そして特に演出方面に対して気難しいことでも知られていましたか。ザ・ディーヴァと表現して差し支えないのではないかなと。自分が与えるのだから人にも求める。気に入らなければ、降りる。
まあそもそもですがオペラというのはなかなかまとめ上げるのが簡単ではないですね。こうだとする気持ちと、ああだという別の人の考えとがガチンコで激突することもあります。屈指の天才たちが集うような場では、幾多もの妥協も必要。妥協がいやなら、降りる。いやならそもそも参加しない。チェリビダッケみたいにオペラからは距離を置く。
現代のわけわかんない演出を見たらコトルバシュだったらどうするだろうかと思いますが、やっぱり演出家と衝突して降板するのかもしれません。
60年代後半から頭角を現し、70年にはウィーン国立歌劇場にデビュー。そして1975年フレー二の代役としてスカラ座に呼ばれロンドンから急行。本番15分前に劇場に着いてほぼ準備なしでミミを歌って大ブレイク。なお指揮者プレートル、ロドルフォはパヴァロッティ。なんという豪華なところに飛び込む恐怖の代役でございましょう。ここに飛び込むだけの胆力、そして15分前に着ける、という運、それもまた飛躍に必要な要素だったのでしょう。
ここで大当たりをしたことで、翌年のクライバーの椿姫への録音につながるわけです。ご冥福をお祈りします。


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