ドヴォルザークの一時間のピアノの秘曲

いやー、本当に自分の知っていることっていうのは少ない、と思いますよね。

ドヴォルザークの壮年期にこんな巨大なピアノ作品集があったなんて知らなかったなあ。1時間近くかかる、13曲からなる「Poetical Tone Pictures op. 85」。詩のような、音で描いた絵とかそういう意味です。うっかり者の私はアンスネスがこの曲のCD《詩的な音画集》を去年の10月にリリースしてたなんて知らなかったす。

アンスネスというピアニストは、本当にこういう、マイナーなというとあれですけれど、あまり人が採りあげないような曲も本当に鮮やかに演奏する人だという印象があって、ニールセンのCDとか、北欧の作曲家の小品集とか、それこそ何度も何度も聴いた思い出がございます。

なんと、今夜アンスネスカーネギーホールでこの曲を演奏するんだって!なるほど!それはチケット、苦労するだろうな!と思ったら(意地悪ですいません)、やっぱりあまりチケットの売り上げは芳しくなさそうです。いや、健闘している方と言っていいのかも知れない。

https://www.nytimes.com/2023/01/29/arts/music/leif-ove-andsnes-dvorak.html

こういうマイナーな作品を採りあげるとクラシック音楽の場合てきめんに券売に現れるので、主催者は慎重にならざるを得ないんですよね。でもよくぞ勇気を持って採りあげてくだすった。カーネギーホールに感謝。今回のプログラムを見ますとベートーヴェンの悲愴も入っていて、これは「券売に効果がある曲もくらはい」と、カーネギー側からの希望で入れられたのかもしれません(あるいは本人が組み立てた中に最初から入っていたのかもしれない)。

でもこうして知られざる作品が世に出て、っていうのは面白いですね。ヘンレ社からも楽譜が出ていて(アンスネスもヘンレの楽譜を使っている模様)、その序文を読みますと、ドヴォルザーク自身があまり弾かれないだろうと言っていて、また出版社のジムロックも売れることを期待していなかった、とあります。

なるほど。しかしこうして完成から130年以上経って大ピアニストが採りあげて録音もして、カーネギーホールで初めてこの曲の全曲演奏がされるということでありますから、不思議なものだ。

さあさあ、ピアノ好きの皆さん、とりあえず一曲聴いてんか:

弾いてみたくなる。誰のためでもなく、自分のためにひっそりと弾いて愉しむのもいいかも、そんなピアノ作品集のようにも思います。

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