遅刻。
この言葉が持つ恐怖の響きをご存じの方はそう多くはおられないでしょう。いや、めっちゃたくさん居られますか。そうですね、われわれ人間と人間が作っている社会ですから、遅刻、ありますよね(どっちや)。私も何度か遅刻して恐ろしい思いをしたことがあります。一度は公演にアーティストを連れていくのに失敗してコンサートが45分遅れてスタートしたという経験があります。げっ、原因はゲリラ豪雨。だが理由はどうあれ、遅れたという事実は動かないのです。
アンナ・ネトレプコが5月26日のミラノ・スカラ座公演に間に合わなかったのはどうやら交通事故。裏が取れているわけではないですけれど、レブレヒトによれば、ネトレプコはミラノから数時間離れた場所に滞在していて、そこからスカラ座に向かう際に高速道路の多重事故現場に巻き込まれ、全く間に合わなかったということなのだそうです。
想像ですが、もう絶対無理だわ、っていうことになって本人から連絡がいき、総裁が舞台上で謝って大ブーイング、カバーキャストのマルタ・トルビドーニが歌い、結果は上々の反応だったということだそうです。日本ですと休憩時間や終演後に猛烈なクレームが殺到するのは間違いないのですが、この夜のスカラ座はどうだったのだろうかと思うとブルッと震えるようです。ネトレプコだから値段もきっと高かっただろうし。
何が起こるか判らないから、滞在はホールの出来るだけ近くにするというのはわりと鉄則で、公演当日にどうしても移動&本番(これを乗り打ち、と業界用語では言います)というスケジュールでやらねばならない時は、十分に余裕を持った時間で動く、というのが我々の常識ではあります。
しかしアーティストも人間ですから、出来るだけ休んでいたい、ゆっくり出発したいという気持ちもあります。疲れていてはよいパフォーマンスが出来ませんから。そこで「何時に出る」問題が勃発するわけです。
明日、何時に出る?
これはアーティストをお連れする身である私たちのような人間にとっては決定的に重要な会話でして、ツアー中はかなりの割合がこの言葉で占められているといって差し支えございません(言い過ぎか)。起こってしまってからでは遅い、だがこういうことは起こってしまうのである。恐ろしいニュースを目にしました。これからも動きについては余裕余裕&余裕をもって組んでいきたいとの思いを新たにしたのでした。


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