ベートーヴェンの弦楽四重奏の自筆譜、所有者のもとに帰る

このたび数奇な運命をたどったのは作曲家だけではなく、作曲家にとっての子供たち、つまり作品なのであります。さらに言えば自筆譜であります。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番第4楽章の自筆譜がとても不思議な旅を続けているという話で、しかもなかなか話が込み入っておりまして、私もはてなマークが浮かんだとまではいかないものの、いろいろあるんだなって思った、というお話です。・・・っていう説明も込み入っていて長いやんけ!

もともとはもちろんベートーヴェンの持ち物だったこの楽譜はベートーヴェンの死後、最後の秘書カール・ホルツの手に渡り、その後ウィーンで(少なくとも)2人が所有し、それがチェコの実業家フランツ・ペチェックさんの手に渡った、と。

そしてナチスが現れペチェックさんはアメリカに脱出、その際にこの楽譜も紛れ込ませようと郵送したけれどもゲシュタポに見つかる。ゲシュタポはこれが本物かどうか、モラヴィア博物館の専門家に鑑定を依頼。

その専門家(男性とだけ)は、ゲシュタポに没収されないため、偽物だと鑑定。その結果、ペチェック家の財産はほぼすべてゲシュタポに接収されたがこの楽譜はモラヴィア美術館の手に渡ることになった。そしてチェコスロバキアの共産主義政権はこの楽譜を国有化した。

この間、ペチェック氏はアメリカからこの作品を取り戻そうと試みたが失敗。しかしついに、いよいよペチェック家のもとにこの自筆譜が行くことになったそうであります!!ババーン!!

https://apnews.com/article/entertainment-travel-music-europe-0e9635e4e460f45e7c3af267d8c896b4

なかなか不思議な動きをしていますが、こういう自筆譜とかそういう貴重な一次資料というのは、本来はベートーヴェン博物館とかウィーン市とかボン市とかそういうところに集まるというのがベストなのでしょう。しかしそうは言ってらんねえぜというのがこの世の中というものです。自筆譜とかそういうのはデジタルで一括管理して、本物は誰か別の手に、的な感じが現実的な理想なのかな、とも思うのですがどうでしょうか。

このペチェック家の相続人も、もしかするとこの楽譜をオークションにかけたりするなどしてやがてどこかにやってしまうかもしれず、自然災害とか火事とかそういうので失われることになるかもしれませんから。

まあ、ありとあらゆる作られたものはなくなる、それがこの世の常というものですね。諸行無常であります。

コメント

コメントする