オペラの演出家、偉大なる伝統の体現者。ウィーンに生まれ育ったウィーン人。1951年から劇場で俳優として、また演出家として活躍を始めた劇場人。オットー・シェンクが94歳で亡くなりました。
昨今の、読み替え的な演出でブーイングを言わせることに快感を覚えるような倒錯した演出家とは違う、伝統というものをまさにドストライクで投げることの出来た大演出家。なんでドイツではあんなに読み替えがもてはやされるのと思っていますが、ひょっとしたら新しい何かを作り出すことで、クリエイティブな何かをやっていると評価される=予算が付きやすい=税金が拠出される、という構造になっているのではないか、という陰謀論めいた考えを私は実はひっそりと持っていたりしますが、しまった!書いてしまった!!!
ウィーン国立歌劇場では1964年に初めて演出。ルサルカ、魔笛、フィデリオ、ばらの騎士など多数演出。オットー・シェンクの演出は豪華で、トラディショナルで、ああオペラ、という感じがしてよかったですよね。カルロス・クライバーのばらの騎士、何度も見ましたですよね。ゼッフィレッリなどと並び称される偉大なる才能。
アメリカでも大活躍で、メトロポリタン歌劇場でも1978年から2006年までにトスカ、指輪、エレクトラ、アラベラ、リゴレット、タンホイザー、パルシファルなど16作品を演出したということですから、とんでもなく大きな存在だったんです。いまでもニューヨークではマイスタージンガー、ドン・パスクアーレ、アラベラ、タンホイザーはシェンク演出のものを観ることが出来る、と。
最近はお名前を見ることがなくなって久しかったですが、オーストリアのイル湖の湖畔の自宅で息を引き取った、ということで、悠々自適の隠居生活を送られていたのだろうなあ、ということが想像されるわけです。
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