ナイジェル・ケネディは有名なヴァイオリン奏者。だがヴィオラを持っていてももちろん不思議なことではありません。ピアニストがトイピアノを持っている、それよりかはぐっと可能性が高いことです。
しかしこのたび、そのヴィオラを売却する。オークションにかけることにしました。そしてその理由がじつにこう、ヴィオラジョーク的でもあり、シニカルなイギリス人らしい感じになっておりまして、真面目にやれ!と思う方にとってはやや快くは響かないかも知れないのですが、そして昨今のコンプライアンスといいますか、考え方からすればわりと攻めている?いや、すべっている?とか思わぬでもないですが、そもそもヴィオラジョークというものがありましてですね、ヴィオラという楽器とその演奏家を揶揄する感じの内容のもので、こことかをご覧になるとなるほど、と思って頂けると思います。
ヴィオラ奏者でもわりとよろこんで爆笑しながらこういうジョークをいうことがあって、先日来日していましたヴァン・カイック弦楽四重奏団のヴィオラ奏者もむしろ積極的に私にヴィオラジョークを振ってきたので、一緒になってウハハ!あるいはギャハハギャヒー!と笑っていたのでした。不思議と、場が和むのですね。
そういうわけで、グァダニーニ1777年というラベルが貼られている(もちろん本物ではない)楽器、傷の付き方に哀情の程度がわかるこの楽器は幾らで売れますでしょうか。なおすでに名前も付けられていて、「Ex-Nigel Kennedy, A Viola」。これはストラドの名前にかつて所有した人の名前を冠してEx-誰々、とかいう名前がつきがちなのをパクっていると思われます。A Viola(あるヴィオラ)という命名もまた笑わせにかかっている感があります。
推定落札価格は3000-5000ポンド(60~100万ぐらい)。なお落札者にはナイジェル・ケネディの直筆メッセージ(のコピー!)がつきます。「こないだ田舎の道を散歩していて、牛の糞を踏んでしまい、自分のヴィオラがどれほど恋しくなるか、改めて実感しました・・・・・・この楽器はどんな室内楽も台無しにする力を持っています。パブに行く方がずっと魅力的に思えます」「残念ながらウェンブリー・スタジアムでのヒンデミットとレーガーの無伴奏ヴィオラソナタの演奏は、聴衆の要望により中止となりました」。
高いと思うか、ナイジェル・ケネディ所有というストーリーが魅力を発揮するかと言ったところですが、ヴィオラジョークを完成させるとすれば、100万ポンドぐらいで落札して頂いて「なぜならヴィオリストには楽器の本当の価値がわからないから」というオチがつけばパーフェクトということになりますか。逆に売れなかったら売れなかったで、何か面白いジョークがそれはそれで完成しそうでもあります。
競売担当者からのコメント。「ケネディがこのヴィオラの大ファンでないのは確かでしょう。しかし、少なくとも何らかの感情は持っている。まったくの無関心よりはずっといいことです。」


コメント