コミュニティとしてのオーケストラ

© Matthew D. Wilson (CC BY-SA 2.5)

ニューヨーク州のロチェスターにあるロチェスター・フィルの100歳の案内係の女性のことがニュースになっていました。

記事を読みますとこの女性、ジニー・ウィルターディンクさんは40年もの間オーケストラのボランティアとして活動を続けており、最初は看護師として、そしてその役を終えた後は案内係としてずっと劇場に立ち続けてきたとあります。つまり60歳になってから第二の人生を歩み続けてきたというわけ。

https://www.rochesterfirst.com/good-news/rpo-celebrates-longtime-ushers-100th-birthday/

この劇場というのはイーストマン劇場といって、イーストマン・コダックの経営者ジョージ・イーストマンによって1922年に建てられたホール。つまり・・・・この女性は劇場と同い年なんすよ。劇場は、100歳、100歳。ジニーも、100歳、100歳。

んー?どこかで聞いたような台詞やね。

しかし40年もボランティアを続けているというのはそれ自体すでに素晴らしいことです。オーケストラが地域のコミュニティとして機能しているということでもあると思います。「ロチェスターほどいい場所はない」とインタビューに答える彼女の気持ちに偽りはないでしょうし、それを見聞きしたロチェスターの人たちも彼女のことを誇りに思うことは間違いがない。

彼女のインタビューは以下から。

オーケストラとか劇場とかは、単に人がチケットを買って集まる場所、殺伐としたビジネス空間ではなく、地域の人々の心のよりどころ、とまで言うと言い過ぎですが、ゆるやかなコミュニティとしても機能するものだと私は考えています。人間が人間らしくあるというか、そこに行けばなんとなく安心感がある、よく見た顔があって、あ、あの人このコンサートにも来てる、みたいな、別に会話を交わさなくてもいいんですよ、誰もがお互いにリラックスできる空間、そういう存在として「ある」のが一つの理想のように私は考えています。この女性はそのような意味合いにおいて、いわゆる名手とかマエストロとかそういうきらめくスターではないが、小さくとも大きな存在だと思います。オーケストラの「心」の部分と言ってもいいのかも。

他のお客さんから握手を求められたりする、と彼女は語っていて、「名物」的な存在であることは間違いない。おととい、彼女の100歳の誕生日を記念して(実際の誕生日は10月13日)ステージ上に彼女に上がってもらい、ハッピーバースデーが演奏されたということでもあります。これには客席もオーケストラも、さぞ満面の笑みで迎えたことでありましょう。

素敵。

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