アルカルディ・ヴォロドスは日本に来ないピアニストの一人です。「日本に来たい」と言っていただける演奏家の数は、大変嬉しいことに少なくはないのですけれど、そしてもしかしてヴォロドスご自身にもそう思っていただいているのかもしれませんけれど、残念ながらしばらく来日していません。いろいろな事情があるのでしょう。
ヴォロドスと言うと「超技巧派」みたいなイメージもありますけれど、モンポウっていう超静謐な音楽を書いた作曲家の作品もよく弾いています。静かな静かな、映画でいうとビクトル・エリセの作品みたいな、しん、と静まりかえった音楽なんですよ。オール・モンポウのコンサートも聴いてみたいものですなあ。チケット、売れないだろうなあ。
先週木曜日、パリのフィルハーモニーではモンポウから始まるコンサートをやったみたいなんですよね。ところが、そのモンポウの演奏中にトラブル。スマホが鳴った。静かな作品の演奏中にスマホ。それだけでもう、ああ、残念。これが例えばオーケストラがバヒンバヒンどでかい音を鳴らしながら演奏している最中であれば、聞こえないか、あまり気にならないかもしれません。しかしモンポウはだめだ。なぜなら、静かだから。時々静か、そして時々めっちゃ静かだから。
Le preux Arcadi Volodos terrasse les téléphones portables à la Philharmonie – bachtrack
https://bachtrack.com/fr_FR/critique-arcadi-volodos-mompou-liszt-scriabine-philharmonie-paris-juin-2023
ホールの中の人全員にくっきりとスマホの音が聞こえたはずです。書かれている評論を読みますと、どうやら電話が鳴ったのではなく、メッセージが届いた音だったようです。そしてここからが凄いのだ(この話、フランス語から英語と日本語にに機械翻訳して読んでるんで誤訳だったらすいません)・・・・。
音が鳴り、最前列あたりに座っていたとおぼしきその女性はスマホを取り出すと・・・・返信を始めたようなのです。すごい神経の太さ。静まりかえったホールでスマホの音を鳴らしてしまった場合、普通はめちゃくちゃ慌てるか恐縮するはずなんですがそうではなかったようだ。
ヴォロドスは演奏を止め、返信が終わったころに女性に向かって「続けていいですか」と言った。そして演奏を再開したところ・・・・またスマホが鳴った。ま、そうなりますよね。メッセージならやりとりがあるもんね。これにはさすがに聴衆がキレた。「マダム、出ていけ!」と誰かが言い、女性は不満たらたらという様子でホールから出て行った。
なかなか神経の太い方のようにお見受けいたします。
私はどちらかというと行き過ぎた静寂の強要をよしとはしないのですけれど、これはあまりよろしくないように思いますね。しかし人間いろいろ。いろいろな考えを持つ人たちが一カ所に集まればこういうことも起こりうるのです。
だがどうしたらいい?スマホ対策は、どれだけ、なにをやっても、絶対的に100%間違いなしの「これ」という対策がないのがつらいところであります。
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