メナヘム・プレスラー没す。1923年12月12日-2023年5月6日。
なんと悲しい日。
世界屈指の音楽家の一人メナヘム・プレスラーが昨日、すなわち2023年5月6日土曜日にロンドンの自宅で息を引き取ったそうです。99歳。ボザール・トリオの創設者としての超絶的な活動、そして超高齢になってからのソロ活動への回帰。クラシック音楽史にその名前は深く深く刻まれており、今後も伝説として末永く語り続けられることは間違いがない超偉大な人物でした。一度だけ実演に接しましたが本当に素晴らしいの一言だったんですよね。素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしいいいい!!何回言ってもいい足りないぐらいです。
1923年ドイツうまれ。1939年にナチスから逃れ両親とともにイスラエルに移住(殺害された親族もいた)。そして1946年、腕試しのためアメリカへ行き、サンフランシスコで開催されたドビュッシー国際コンクールで見事優勝。ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団にデビューしたことが世界的なキャリアのスタートとなった。1955年にボザール・トリオを設立し、揺るぎない名声を獲得するに至る。ボザール・トリオとしての活動期間は50年を超え、ピアノ三重奏(ピアノ、ヴァイオリン、チェロ)というジャンルにおいての功績では並ぶ者はいない。そんだけすごい爺さんだったのよ。
録音の数も膨大で、20125年にはフィリップスからボザール・トリオ全集60枚組のCDがリリースされた。これ。これ聴けばピアノ三重奏がほぼ全部わかる。
なお、ボザールというのはフランス語でして、beaux-arts と綴ります。ローマ字読みに慣れちまった俺らには読めねえんで要注意です。美術とか芸術とかそういう意味です。芸術三重奏団だとちょっと堅いよね。だからボザール・トリオで定着したんだと思うな。
2008年にボザール・トリオの活動に終止符を打った後はピアノソロも活発に行うようになる。90歳にしてベルリン・フィルにデビューし、名門レーベルのドイツ・グラモフォンからCDをリリースするなど「その年齢でようやる!」という活動を繰り広げておりました。
さすがに近年は活動を聞いておりませんでしたけれど、昨年の誕生日には若手音楽家たち(と言ってもおっさん~じいさまと呼べる人たち)と一緒に写真に収まっているのを見かけていて、ご健在であることが判りました。
私の大学の後輩でプレスラーと共演したヴィオラ奏者がいるんですが「まじで神」と絶賛していました。リハーサル中、一瞬自分の集中力が切れた。そうしたらすぐにプレスラーが自分の方を向いてやさしく「トモコ、いまは音楽をする時間であって別のことを考える時間じゃないだよ」と言ったのだという。この話を聞いたときは本当に鳥肌が立ちましたね、ええ、ええ(東京都在住45歳男性、匿名希望)。世界を牽引するアーティストっていうのは別格なんだなと、心底感動しましたね。
アメリカのインディアナ大学でも長く教え、訃報というか(おそらく)公式な第一報はインディアナ大学から出されました。
Indiana University mourns distinguished professor, piano legend Menahem Pressler – Indiana University Bloomington
https://music.indiana.edu/news-events/news/info/2023/05/iu-mourns-menahem-pressler.html
あとこれも↓
Menahem Pressler, legendary pianist and IU professor, dies at 99 – Indiana Public Media
https://indianapublicmedia.org/news/menahem-pressler-legendary-pianist-and-iu-professor-dies-at-99.php
どうぞ安らかにお休みください。
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