指揮者イラン・ヴォルコフ、逮捕される

音楽家が政治的な行動を取らなければならない状況というのは悲しいことだな、と思い、いや、そういうものでもないのだろうか、とも思います。なかなか簡単な話ではないです。難しいね、で片付けるわけにはいかないと思いつつも、難しいね、と言わざるを得ない、という感じというか。

イスラエル出身のイラン・ヴォルコフはBBCスコティッシュ交響楽団の首席指揮者、アイスランド交響楽団の首席指揮者兼音楽監督を務めたことのある、広く知られた人物です。

今年の夏のBBCプロムスでは

「私はイスラエルから来て、そこに住んでいます。ここを愛していますし、ここは私の故郷です。しかし、今起きていることは想像を絶するほど残虐で恐ろしいことです。何千人もの罪のないパレスチナ人が殺害され、イスラエル人人質がほぼ2年間も劣悪な環境に置かれ、政治犯が刑務所で苦しんでいます。イスラエル系ユダヤ人とパレスチナ人だけでは、この事態を止めることはできません。皆様には、この狂気を止めるために、できる限りのことをしていただきたいと思います。各国政府がためらい、行動を待っている間、一つ一つの小さな行動が重要です。これ以上、この状況を放置することはできません。一瞬一瞬が、何百万人もの人々の安全を危険にさらすのです。」

と、このように戦争に反対するスピーチをしたことを知っていましたが(なお、当面の間イスラエルで働くことはない、とコンサートの後に語ったそうですが、そうでなくとも「干される」ということになるのかもしれません)、ヴォルコフはさらなる行動に出ました。このたび、ガザの国境付近で抗議活動を行い、逮捕されたそうです(同日中に釈放)。連行される際「今すぐ虐殺を止めなければならない。みんなの人生を台無しにしている、やめろ!」と叫んだそうです。

「飢餓と虐殺を終わらせるため、そして向かっている国際援助船団(グレタ・トゥーンベリさんの船のことですねきっと)に連帯するため、およそ100人の仲間とともにガザのフェンスに近づき、30分にわたるデモを行った。兵士たちに服役を拒否するよう呼びかけた。イスラエルでも世界でも、私たちが困難を乗り越えれば、地平線はより鮮明になるだろう。アーメン。」と、仲間たちは語った、ともあります。

行動に出ることの勇気を称えたいが、行動には責任も伴う。極端にも見える行動であり、この後指揮者としてのヴォルコフはどうなる、ということに関しては、わからない、としか言えない、でしょうか。

キャリアを追うか、信念を貫くか。他人や外野がどうのこうのと言える問題ではないですね。

コメント

コメントする