ユーロ高、ドル高の衝撃

円がユーロやドルに対して弱い状態が続いています。

参考:三井住友銀行為替レート

クラシック音楽業界というのは基本が輸入業であります。すなわち海外からアーティストが来てコンサートを開くというのが求められる。もちろん邦人演奏家によるコンサートも人気が出てきているようでもあり、それはそれで喜ばしいことです。しかし、やはりというと怒られるかもしれませんけれど、海外の優れた演奏家による演奏を聴きたいという需要も大きい。なので、海外から呼びたい。そしてようやく水際が緩和されてきた、それっ・・・というところでのこの驚異の円安。それが緩和の喜びを大きくそいでいる。

とても困ったことです。

今年が始まったような頃は、1ユーロは130円ぐらい、1ドルは115円ぐらいで、だれもがぼんやりとユーロ、高いなーと思っていました。来年の海外アーティストのツアーについて試算するときに「145円で計算しちゃったすよ」「いやーさすがにそれはねえ、はははっ」みたいなそういう乾いた笑いしていたところが、まじで急速に145円になっちまった。しかもドルについていえばもっと状況は悪く148円を超えてきたということで、もう本当に利益もくそもねえな!(言葉が悪くて申し訳ございません)と、わりと投げやりになっています。

交渉や契約って言うのはぎりぎりにするもんではなく、1年前とか2年前とか、相当前からやりますから、たとえば1ドル115円で考えていた利益(そもそもが本当に微々たるものです)、それが、為替レートによって吹き飛ぶということになると、お手上げ。

例えばツアー全体のギャラとして1万ユーロを用意していたとする。今年1月の支払いなら130万円を用意すればよかったのが、今なら145万円を用意しないといけない、15万円追加でかかるわけですよ(対ユーロ)。ドルについて言えばなんと33万円も追加でかかわるわけですよ。これが大きなプロジェクトになり、桁が一つ増えて10万ユーロなら150万円の追加出費、10万ドルなら330万円もの追加なのです。20万ユーロなら30万ユーロなら・・・・。ブルブルッ。そしてこの円安、底がまだまだ見えない。さらに行くかもという状況。今後の値付けに関して考えざるを得ない。

じゃあそもそも円で契約したらええやんって言われそうですけど、そうすると日本という市場に対する魅力がなくなる=国際的競争力が低する。日本なんて行かなくていいね、遠いしね、じゃまたね、となるんですよ。そして実際にそうなっているんですよ。

そんなこんなで、原価にあわせ、食料品やなんかと同じですね、このご時世なのにチケット代金を上げないといけない。お客様へのチケット代金となってダイレクトに直撃することになる。

ただでさえコロナでコンサート開催が困難な時期が続きクラシック音楽業界は苦しんできた。コンサートについては今は開催できるようになっているが、まだまだ買い控えがあってチケット代収入が伸び悩んでいるところに、このような理由でチケット代金が上がるとなるとさらなる買い控えが進み、そうなるとさらにチケット代金を上げざるをえなくなり、そうすると・・・というスパイラルに陥る危険性がある。

インバウンド業界の方々は海外からの観光客にアピールできると言うことで大喜びかもしれません。うむ、うらやましい。しかしクラシック音楽業界的には円安で得られるものはほぼありません。

知恵を絞って頑張りましょう。

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