フィラデルフィア管弦楽団が英国で曲目を変更した理由

ヤニク・ネゼ=セガンが率いるフィラデルフィア管弦楽団は今週から15日間のヨーロッパ・ツアーにでかけることになっています。その最初の目的地であるエジンバラ音楽祭(英国)において騒動が持ち上がっているのであります。

そこではベートーヴェンの《第九》をやることになっていて、そう、合唱が入る曲です。合唱団はさすがにアメリカから連れて行くのではなく、地元の合唱団が参加することになっていました。ところが、ここへきてオーケストラ側が合唱団にマスク着用での歌唱を要求し、合唱団がそれを拒否。そのため《第九》は演奏されないこととなり、代わりに同じベートーヴェンの《運命》が演奏されることになった、というニュース。

https://www.inquirer.com/arts/philadelphia-orchestra-edinburgh-festival-chorus-masks-covid-20220819.html

https://www.inquirer.com/arts/philadelphia-orchestra-edinburgh-festival-chorus-masks-covid-20220819.html

わりとスキャンダラスであります。疑問がいくつも出てくるのであります。

O嬢 「合唱団はどうしてマスク着用をいやがったのかしら?」
Pさん 「いや反対にどうしてオーケストラは合唱団にマスク着用を望んだのでスカイ?」
Q君 「曲が変わるのはいいとして、いやよくないけど、そこは百歩譲ったとして《第九》70分、《運命》は30分やぞ。半分以下やんけ。せめてもっと長い《英雄》(50分)とかにできんかったんか」
R夫人 「てかそもそもなんでこういう議論をギリギリになってやってるわけ?」
S氏 「もしかして、今頃大量のチケットキャンセルが発生しているのでは?収支がやばくならない?」
Tちゃん 「これ、スポンサーも激おこ案件ですわ。『二度とないわ』て言われてるんちゃう?」

いろいろ考えればもっと疑問が出てくるでしょう。とても困ったことです。

私としましては、R夫人の疑問の通り(ほんでR夫人て誰やねん)、アメリカとイギリスではコロナの規定が違う(かもしれない)わけだから、そこを最初からすり合わせしていなかったのかどうかがそもそも疑問ですね。「担当者がうっかりしていた」的な、いわゆる、「秘書がやりました」的な押しつけ話で済むようなレベルの話かどうかというと、そういうわけでもないのでは、って邪推してしまうのですがどうでしょうね。

みんな分かってたはずやん。

ていうところに収束するような気がするんです。

いや、もしかするとですよ、曲目を決めたときは(多分1年前とかそれぐらいかと)、お互い、両国におけるコロナ規定が異なることを知っていたが、公演までには同じになっているであろう、あるいはマスク無しでも問題がない時代に突入しているであろう、とかなんとなくそういう共通見解だったのかもしれない。ところが最近アメリカの他のオケがやったブリテン《戦争レクイエム》で大クラスターが発生したし、よくよく考えたらこれヨーロッパツアーの初日で、この公演でクラスター発生したらツアー全体が危機にさらされるやんっていうことでオーケストラ側が突如態度を硬化させたっていうことかもしれない(ツアーの全体スケジュールはここにあります)。

しかし合唱団側も「どうも投票をしてマスクは嫌だと決めたようだ」と書かれていましたけど、そこで折れないっていうのもすごい。私なら、例えばオーケストラのツアーが危機にさらされるかもって思ったら、しょうがないかなって思ってマスクすると思うけど。合唱が圧倒的にエアロゾル出すことはいまや誰もが知っていることですし。しかも自分たちが反対に回ったら曲が変わっちゃうかも=自分らの出番がなくなる可能性を知っていながらなお、マスク無しで突っ張れるかっていうと、私ならやらないけど。安易なことを言いますけど「コロナが生んだ分断」ですね。つらいですね。

いや、それかもしかして合唱団は「自分たちが反対したらオーケストラが折れるやろ。キャスティング・ボートを握ってるのは俺らや」って思ったのかもしれません。

こういうところで変に突っ張ると、最終的に自分たちが損することになるだけではないかと思うんですがね。

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