来月閉幕するブロードウェイの「オペラ座の怪人」に関するNYタイムズの特集記事が大変興味深い件

私はというと、オペラ座の怪人、って言われたら即座に頭の中で「ジャーン!!!」とオルガンが鳴るくちです。そのあと、ジャジャジャジャジャー、と降りていったかと思うと、ふたたびジャジャジャジャジャーンと上昇するのである。下降しても立ち上がる。なんと勇壮でなんとポジティブな。私のように基本ネガティブな人間にこそ最もふさわしい・・・。ああ、ああ。生涯で一度だけ行ったニューヨークでももちろん観たさ、ブラザー。

さて、ミュージカルのオーケストラピットというのはオペラよりもこじんまりしていて、それでもオペラ座の怪人では27人が演奏していてブロードウェイ最大なんだそうですけれど、1988年にショーが始まって以来、ずっと在籍していたという音楽家がなんと11人いるということで、雇用が素晴らしく守られていたことがわかる。いよいよオペラ座の怪人が来月閉幕する(4月16日が最終公演)っていうんで、そのミュージシャンたちにインタビューしたっていうニューヨークタイムズの記事があまりにも素晴らしく、めちゃ感銘をうけました。この人たちはラッキーだった!いいね!

https://www.nytimes.com/2023/03/09/nyregion/phantom-opera-orchestra.html

開演した当初はその大ヒットぶりに「もしかしたら5~6年ぐらい続くかもよ」みたいな軽口も叩かれていたそうですが気がつけば35年。まじか!ほとんど音楽家の人生そのもの“まるごと”と言っていい長さだ。25歳で演奏し始めたとして、35年つったら60ですよ。気がつけば子供どころか孫がいるような年代ですよ(実際孫がいるミュージシャンもいるらしい)。コンサートマスターの一人も1990年からやってるっていう人がいて「どれほど信じられないほど幸運だったかはいくら強調してもしすぎることはない」と言っています。素晴らしい。

結果的にとはいえ、30年以上にわたって同じ音楽をひたすら演奏し続けるというのもすごいことですよね、地獄のような退屈との戦いにもなるわけですから(つっても毎日じゃなくて月の半分とかぐらいだそうです。それ以外は別の仕事も出来た)。でも、お金になるんだもん!そりゃあそうだ。いくら素晴らしいと自分が思うことだけをやっていてもお金にならないなら意味ないよね。いや、意味なくはないかもしれないけど、生活費は稼げないよね。安定的収入という言葉の持つ意味の強さたるやすごい。

例えばクラリネット奏者のマシューは94年に参加して、当時は一晩のギャラ140ドル、いまは291ドルということで、月の半分15日演奏したら4365ドル(59万円ぐらい)。十分すぎるやん。福利厚生も充実しているとあるんで、そういうのが給料からさっ引かれても、十分な収入です。しかも残る半月は別の仕事もできるわけだから。

劇場とともに育った18歳の子供がいるっていうのもとてもぐっとくる話(赤ちゃんだった頃はママが演奏しているあいだ舞台裏で舞台スタッフが面倒を見ていた)。

もちろん、入って数年という若い世代の音楽家もいて、こういった人たちは新しいプロジェクトを求めて羽ばたいていくわけですが、ブロードウェイの「オペラ座の怪人」で演奏していたって言ったらきっと今後もいい話があるんじゃないかなとも思います。

すべての音楽家の将来に幸あれ(そして私と私の家族の未来にもNE!こういうのをBinjouっていうのさ)

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