ジョン・ノイマイヤーの振り付けた《オテロ》が差別的であると上演中止

300年近いの歴史を持つロイヤル・デンマーク・バレエ団で上演予定だったジョン・ノイマイヤー振り付けの《オテロ》が人種差別的だとして上演が中止になった。

https://www.diapasonmag.fr/a-la-une/juge-raciste-un-ballet-de-john-neumeier-annule-a-copenhague-32071.html

オテロという作品自体が、近年では問題視されがちですね。黒人が主人公であるから。アイーダなどと同じように、人種差別的だと批判されがちなわけです。特に出演者が白人の場合、黒人であるかのように黒塗りをすることは絶対的な禁忌となりつつあります。

「過去の作品への検閲」という反論もあるでしょうけれども、そう単純化もできない。現代においては繊細な対応が求められる作品であると言えましょう。

ノイマイヤーの振り付けのどこがよくなかったのか。夢の中でデズデモーナを見て、アフリカの狩猟ダンスを踊るシーンがとてもよくなかった。ここが人種差別的、ステレオタイプ、と見なされ、中止に追い込まれた。このシーンではボディペインティングが予定されていて、ノイマイヤーはそれをしないことは同意したが、振り付けに関しては撤回しなかったと。

ハンブルクバレエ団が公開しているノイマイヤーの振り付けによる《オテロ》のトレイラー:

白人が黒人の踊りを踊ることが侮蔑にあたるのか。白人が着物を着て踊るとダメなのか、蝶々さんを歌うことはNGなのか。ノイマイヤー本人はそのような意図はなかった、むしろ英雄的に描いていた、差別的な意図はなく、ポジティブに表現していた、なぜそれがいけないのか理解できない、と話しているが、バレエ団のメンバーはそうは思わなかった。

バレエ団の監督は「ノイマイヤーの振り付けを人種差別的だとは思わないが、若い世代のダンサーが異なる認識を持つかも知れないことは理解できる」と述べて「それを尊重しなければならない、自分の役割について快く思っていないアーティストをステージ上に送り出したくはない」とも語った。

今後同バレエ団とノイマイヤーとの関係はどうなるのか。すでにいくつかのプロジェクトが白紙に戻されてしまったことから、ノイマイヤーは「60年にわたる友好的な関係は終わった」と述べて今後の同バレエ団との仕事はもうない可能性を示唆した。

時代は変わっていく。人の考えも変わっていく。それを一元的に「最近の若者は」とやるのはよくない、というところに落ち着いていくような話なのか。これからもよく考えていきたい。

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