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アンジェラ・ヒューイットが語る記憶力と絶対音感の関係

アンジェラ・ヒューイットはバッハ演奏で世界的に幅広く知られているピアニストですね。バッハの全部の鍵盤ソロを演奏するって言う壮大なプロジェクト「バッハ・オデッセイ」、日本でもやっていましたね。ほんで、ピアノをやっている方なら常識なのですが、バッハの音楽を記憶する=暗譜するという行為は地獄のように難しいことであります。

特にフーガ。これは専門的にはポリフォニーといいまして、これは右手が旋律、左手は伴奏というものではなく、右手も左手も旋律ですねん。右手と左手で合計2つの旋律を弾く場合もあれば、3つ4つあるいは5つもの旋律を弾き分けないといけないということもあるのです。旋律と旋律が複雑に絡み合っているのを解きほぐしつつ、指に、頭に入れていく。この作業、普通に考えて不可能やねんわ。

その不可能を可能にしているのがピアニストたちなのだね。

アンジェラ・ヒューイットはそんな強者揃いのピアニストたちの中でもとりわけ記憶力が強いようで、バッハの鍵盤作品はフーガの技法以外全て、またベートーヴェンのソナタも32曲全部を長年記憶していたということなんで、やばめですね。すご過ぎで賞を差し上げたいレベルですね。

‘Like sex and religion, we don’t like to talk about memory’: pianist Angela Hewitt on how she keeps hers in shapeThe Guardian
https://www.theguardian.com/music/2023/apr/25/angela-hewitt-pianist-memory-muscle

ところが、50代に入って記憶力が低下してきたと。シュトゥットガルトで平均律クラヴィア曲集の演奏中に音符がわからなくなってしまったと。いまは64歳でますます記憶力が低下しているとのことであります。

若い頃は記憶力に何の疑問もなかったようで、反射的に記憶する、絶対音感を持っていて聴覚から記憶するというのが得意だったようですけれど、だんだん加齢と共に絶対音感が衰えてきたというのです。絶対音感は年齢と共に、つまり記憶力とともに衰えるのだということを今日の今日、わたしは初めて知りました。絶対音感は記憶力とも関係があるのか!

加齢に伴いそもそもの記憶力が低下しているので、「昔はどんな複雑な和音でもすぐにすべての音を言い当てられたが、いまは考える時間が必要」ということなのだそうであります。なるほど!と膝を打つ、とまではいかないかもしれませんけど、そういうもんなんか!と思いました。はい、すいません単純すぎる感想文で。

なお昨今の楽譜を見て弾くという行為に関してはヒューイットはあまり積極的ではない。最近はiPadで演奏する人たちも少なくない、バッハコンクールでも楽譜を見ていい、ということになっているが、自分自身は暗譜での演奏によって開放感と達成感を味わえる、と言っていますね。記憶力がずば抜けているからそういうことがいえるのだと思うんですよね、きっと。

おもしろいのは「レストランで同時に二つ以上の会話を聞く」ことで脳を鍛えることが出来る、とヒューイットが言っていることで、そんなことをこの人はやってるんかいなと思うと同時に、これはまあバッハの複雑な声部(音楽)の処理能力の強化とも関わりがあるのだろうと想像できるわけです。そうだ、聖徳太子にフーガを弾かせたら抜群だったかもな。

なお、ヒューイットが語っている暗譜失敗の逸話も面白かったので(面白がってはいけないですが)最後にご紹介しておきたい。

ヴラド・ペルルミュテール(フランスの著名ピアニスト、1904-2002)は家を出てホールに行く直前、妻に忘れ物はないか尋ねられた。その場に居合わせた友人が「協奏曲の冒頭だ!」と言った。数時間後にペルルミュテールはベートーヴェンの協奏曲第4番(静かなピアノソロで始まる曲)を弾くべく舞台上にいたが、最初の音が思い出せなかった。

だって人間だもの(みつを)。

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