ギリシャ人ですがロシアで学びロシアを拠点の一つとし、ノヴォシビルスクでムジカ・エテルナというオーケストラを設立し現在まで率いてきた変態系(褒め言葉として使っています)指揮者のテオドール・クルレンツィスは、ロシアのウクライナ侵攻後、なかなか難しい立場にあります。
ムジカ・エテルナのスポンサーの一つにロシアの銀行が含まれていることから、ヨーロッパでのコンサートがキャンセルされたり批判にさらされたりしていて、それに対して本人が口を閉ざしてきたこともあって、「で、本音はどうなの」と思われているところもあります。
まあ本音っていっても、ショスタコーヴィチみたいにどこに本音があるのか #全くわかりま千円# みたいなケースも音楽家にはしばしばあることなんで、それはそれでありなのかも?という気も致します。しょうがないっすよ、で片付けるのも良くないのかもしれませんけれど、音楽家だってなんだって生きて行かないといけないんですよ。音楽家は本質的に人前で音楽をやりたい生き物なんですよ。いろいろ批判する方もいるし、批判は甘んじて受けなければ行けないんでしょうけれど、クルレンツィスの場合も最終目標たる「音楽をやる」のため行動する、そういうスタンスなのかもしれないと思います。
本音をぶつけると角が立つし、情に棹をさせば流されちゃうしさぁ、意地をはると窮屈だし、ともかく人の世とは生きづらいわあ、と夏目先生も言っているじゃないか。
で、新しいオーケストラ、つくっちゃった。今年の10月に始動するそうです。その名も「ユートピア」すなわち「理想郷」。
https://www.nytimes.com/2022/08/01/arts/music/teodor-currentzis-utopia-musicaeterna.html
うそやん。
もともとユートピアという単語はギリシャ語をベースに作られた造語で・・・ハッ!クルレンツィスはギリシャ人だね、何たる偶然!!!(白々しい)
オーケストラの名前に理想郷なんてつけちゃうネーミングセンスに驚愕と言うか、そもそも「ぜってーオーケストラに理想郷なんて存在しねー」という現実を誰よりもよく知っていて名付けているのに違いなく(注:オーケストラっていうのはドロドロした人間の感情が渦巻く場所で、ユートピアよりもディストピアに近い場合が多いです)、本当に確信犯的で、まさしく本音が見えない。
素直に「理想郷を目指すんだ、すごいな」って読んだらいけないところですよこれは。そんなお子様ランチみたいなものではない、ぶっとい六角レンチでギリギリと締め付けられるような名前であると告白せざるを得ますまい(どんな例えや)。
全世界から112名が集まった、とクルレンツィスの公式サイトには書かれています。
以下私の感想:
①もうオーディションやったんだ
②100名以上集めてるとか、めちゃくちゃお金かかるけど、ちゃんと金策もしっかりやってるんだ
やはりこの人はただものではないなと思わされるわけです。では既存のオーケストラ、ムジカ・エテルナの方はどうなるんでしょう。リリースにはそのことには全く触れられていませんがまさか放り投げてしまうなんてことが?いや、蓋を開けてみたらオーケストラの名前が変わっただけでメンバーは実はほぼ一緒、なんてこともあったりして。まさかね。
コメント
コメント一覧 (1件)
何処へ行っても住み辛いと悟った上での楽隊創設ならば、正に漱石先生仰る通りのストーリー展開だなと思います。しかしその行動力、マネジメント能力は本当に羨ましい限りですね! 楽隊作っちゃうなんて!(まあコンサルタントがいるのかも知れませんが)