バーミンガム・シンフォニーでボストリッジが演奏を止めたのは

先週、バーミンガム・シンフォニーでイアン・ボストリッジが演奏を途中でやめた。曲目はブリテンの《イリュミナシオン》。めっちゃ聴きたいプログラムや。ボストリッジは最近、札幌交響楽団の素晴らしいブリテンを聞くことができました。神奈川県立音楽堂でのリサイタルも聞かせて頂きましたが、あちらもいろいろな意味で素晴らしかったですね。

リートであれだけの人が集まるということがすごいな!とも私は感動していたのでした。先日、上野で関わらせて頂いたシェーンベルク祭りでのトークでも不肖私がお伝えさせて頂きましたが(その時の動画は東京・春・音楽祭にあります)、ドイツなら200名ちょっとだったというコンサートが、日本なら500人ぐらい集まったということで、日本の聴衆の熱心さや素晴らしさを体感したわけです。やっぱり日本はすごいんだよ!!ギャバー!!(わけもなく興奮するやつ)。

ところでなんでボストリッジが演奏をやめたのかというと、スマホで動画を撮影している人がいたから。「光が目に入ってきてとても気が散るのです。どうか電話を置いて頂けませんか」。

んなあほな!って思いますよね。いまどきはロックのイベントとかで撮影OKなこともありますが、さすがになかなかクラシック音楽の場合はそうはいかない。アンコールは撮ってOK!という演奏家(それこそ角野隼斗とか)もいますが、せいぜいがアンコールであって、本編はなかなかの困難や抵抗が伴うであろう。

なによりも会場が暗いから目立つ。これが大きいですね。撮影者の後方の人はぴかぴか光る画面に気が散るかもしれない。おい、ピカチュウ!光っているんじゃねえよ!!(ピカチュウに謝れ)

ところがバーミンガム・シンフォニーホールはなんということか「撮影をしてもいい」とFAQで書いてしまっているんですね。今回のボストリッジの件でわーわー騒いでいた人たちのコメントをみますと、だいぶ前からそう書かれているということ。確かに書かれている。

Will I be able to take photographs?

We are very happy for you to take photographs and short video clips at our concerts. We ask that you are mindful of disturbing artists and other audience members and suggest that you take pictures and videos during applause breaks. Please dim the brightness on your phone, and do not use your flash.

写真は撮っていいのかしら?
コンサート中の写真や短いビデオ撮影は大歓迎だよ。他のお客様やアーティストの気が散らないように気をつけてね、撮影は拍手のときがオススメだよ。スマホの画面は暗くしてね、フラッシュはたかないでね。

https://cbso.co.uk/your-visit/faqs

なんや、なれなれしいな!(訳がなれなれしいだけです)。しかしこれに則れば、演奏を止めて撮影をしないでほしいと頼んだボストリッジが悪いっていうことになりかねないが大丈夫か。

全員が、あるいは大勢がスマホをかざしてコンサートを撮影するというのはどういうシチュエーションなんだろうか。幼稚園のお遊戯会とかそういう感覚か。しまっておいて時々見返す。これはなんというか、自分自身のための記憶装置ですね。

買ってサインを貰い持って帰ってきたCDというのは一種コンサートの記憶装置でもあるわけですが、スマホでコンサート動画を撮影して何がいいことがあるんだろうか、と思うと、なんとなく記憶装置的な意味合いも大きそうですね。

他人の邪魔にならず撮影できる方法が生まれればいいのでしょうか。たとえばメガネ。規制したって破る人は必ずいるし、やめろ!と声高に叫ぶのもなんとなく考え物だし、バランスですかね。

しかしスマホでずーっと動画を撮影し続けるというのはさすがに気が引けて、私ならできない(気にならない人だからやっていたのでしょうけれど)

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