ベルリン・フィルがキーウ(キエフ)交響楽団およびウクライナ・ユース交響楽団のパトロンになる

クラシック音楽とパトロンに関する本を書いたからと言うわけではないんですけれど、パトロンとパトロンの活動には関心があります。いろいろな形態がりますけれど、裕福な個人が作曲家を支援する、あるいは文化財団が器楽奏者を支援する、とかそういうのが一般的な「パトロン」のイメージでしょうか。

しかし“オーケストラがオーケストラのパトロンになる”っていうのも、ありなんやでというニュースですね。いや、これってなかなかないパターンかなとは思いますけど、ダメというものでは全くない。

そもそもオーケストラなるもの、基本的に自らの活動に重きを置き、資金集めや集客をなんのかんのとフーフー言いながらやっているものなので、ほかのオーケストラのことになんかなかなか関心やパワーやお金を振り分けるなんていうことは出来ないと思うんです。

しかし、ベルリン・フィルはこのたびパトロンになることを決め、昨日それを発表した。ベルリン・フィルはキーウ(キエフ)交響楽団およびウクライナ・ユース交響楽団という、ウクライナの2つのオーケストラのパトロンになったのです。ドーン!!

The Berliner Philharmoniker become patrons of Ukrainian orchestras -Berliner Philharmoniker
https://www.berliner-philharmoniker.de/en/news/detail/the-berliner-philharmoniker-become-patrons-of-the-kyiv-symphony-orchestra-and-the-youth-symphony-orchestra-of-ukraine/

これはベルリン・フィルだからこそできるのだ、普通のオケは無理だね、という言葉もあるでしょう。そうです。ベルリン・フィルがやることに意義があると思う。世界をリードするオーケストラが、戦争により苦しめられているオーケストラを支援する。さらにはユースオーケストラも支援する、ということで、若者たちに希望を差し伸べる、端的に言って素晴らしいことじゃないかい?

具体的には何をするのか。

1.ベルリンのフィルハーモニーでの演奏会を主催する
ギャラが発生するからオーケストラにとってはとてもありがたいことです。すでに2022年にコンサートが開催されていて、その演奏会が今回に至るきっかけとなったのだ、ということがリリースに書かれています。一発で終わるのではなく、継続的な支援をお願いしたい、と頼まれたのでしょう。あるいは、ベルリン・フィル自らが申し出たのかもしれない(であればなおのこと素晴らしい)。継続的な支援というのは本当に難しいことで、人々の関心をどのように高めるか、が大きな課題として横たわります。人は誰であれまた何に対してであれ「飽きっぽい」ので、なにかを継続するというのは非常な困難を伴うのです。

2.楽器の調達をする
楽器を貸す、あるいはプレゼントする、あるいは大幅に安く譲渡する、そういうことがされるのでしょう。そもそも楽器を手に入れることが困難な彼らにとっては、最大のオアシスとなるような支援かもしれません。楽器があって、それを演奏する喜びっていうのは半端ないんで。

3.教育分野での協力
どういう形になるかはわからないんですけれど、教育は重要です。ベルリン・フィルのメンバーがユースの子供たちを教える、あるいはベルリン・フィルに限らずベルリンの優秀な演奏家たちがレッスンをする。そういうことが出来れば戦時下で苦しむ若者たちにどれほどのインスピレーションを与えることになるか、生きる希望を与えるか。想像しただけで目頭が熱くなる。

なお、こういうことをすると必ず、じゃあベルリンの一般の若者はどうなの、彼らにも教育の機会がないのはアンバランス、という声も出てくるものです。その辺りのケアも大切なことですね。

最近読んだ小泉悠さんの対談を読むと来年も戦争が続くのでは、という事も書かれていました。月並みなことしか書けないんですが、ウクライナに平和な日が来ることを願っています。

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