隣は何をする人ぞ。メンデルスゾーンの子孫は何をする人ぞ。
大作曲家と呼ばれる人の子孫はどういう人たちなのか。それにはあまり注意が振り向けられないような気がしている。バッハには20人の子供がいて成人したのは10人。その10人に子がいたのかどうか、そしていまその末裔がご存命なのか、そういったことはあまり話題にならないし、人々も気にしない。でも「この人、バッハの子孫なんだって」と紹介されるとにわかに「なにっ!!」と軽くショックを受け身を乗り出してしまうにちがいない。いやはや人間とは不思議なものだ。
そもそも結婚しなかった大作曲家も少なくない。ベートーヴェンやショパン、ブラームスなど。そして結婚しても子供がいなかったグリーグみたいな人もいる。あ、大作曲家の末裔で最も有名なのはワーグナーの一家ですかね。いまもバイロイト音楽祭を運営して、世の中の第一線で活躍/暗躍している。
だがそのほかの有名な作曲家の末裔といえば?
メンデルスゾーンには子供が5人いた。そしてその直系の子孫の少なくとも1人はいまアメリカにいる。リサ・リプトンはオレゴンのオペラハウスのエグゼクティブ・ディレクターを務める傍らポートランド(オレゴン州。アメリカの左端の上の方)に昨年6月、バー「メンデルスゾーンズ」(Mendelssohnsと複数形。所有形ではありません)を開いた。そしてエスクワイア誌が毎年選んでいる「アメリカ最高のバー」にいきなり選出されたというから凄いじゃないか。音楽史上に燦然と輝く天才中の天才作曲家のDNAがばっちりと伝えられた結果、素晴らしい場所が生み出されたのにちがいない。
Mendelssohn’s bar is demystifying classical music with cocktails and Operaoke – Oregonlive
https://www.oregonlive.com/living/2023/06/mendelssohns-bar-is-demystifying-classical-music-with-cocktails-and-operaoke.html
その名前の通り、音楽の生演奏があって、それをBGMにしながらドリンクを楽しむという空間のようで、さすがメンデルスゾーンの名前がついているだけはある。また毎週火曜日は生演奏に乗せてお客様がオペラアリアを歌えるのだという。名付けて「オペラオケ」。カラオケとオペラの合体だというのだが、なかなか奇妙な感じ。アメリカでもカラオケは流行っていると聞くが、これからはオペラオケが熱いのに違いない。たぶん。きっと。ひょっとすると。あるいは。
演奏する場所は客席とは離れている。客席よりもだいぶ上にステージがあるのであまり緊張せずにすむのだとか。気軽にクラシック音楽を楽しめるし、演奏する側も気楽にやれる。上手ではなくても歌って気持ちよくなれるということで、なかなかよく考えられているのだ。
写真を見る感じ、激烈にがんばったクールな空間というよりも、地元の人々にも気軽に楽しんでいただける、そんなカジュアルな感じの場所のように感じられるのもポイントが高いということか。
出されるオリジナルカクテルの名前は「ピカルディー・サード」「ドリンク・ウィズアウト・ワーズ」「ミッドサマー・ナイト・デア」など音楽やメンデルスゾーンズ作品にちなんだ駄洒落風で、音楽好き、メンデルスゾーン好きが見たらクスッと笑えるようになっている。
メンデルスゾーンズの早期の日本上陸を待ちたい(来る日があるんか)。
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