クラシック音楽コンサートのプログラムにはなぜチラシが挟まっているのか

クラシック音楽のコンサートではなぜプログラムとともにチラシが強制的に配られるのか、大変邪魔だと思う方もおられるかと思います。演奏中に落とされたら大きな音も出るぜ!!・・・ですよね。押しつけと感じられたら大変申し訳ございません。

なぜだろうなぜかしら。結論を先に書くと「それは券売に効果があるから」です。

回り道をするようですが、あれはわりと手間暇がかかっていることはご存じでしょうか。「ちらしの挟み込み作業」と呼ばれる作業が公演の前、主に会場のロビーで公演日の数時間前や公演日前日などに行われ、それによって生み出されている成果物なのです。

挟むちらしをずらっと机に並べ、流れ作業をやる。そこにいる人が総掛かりとなり(そのためだけに人が呼ばれることもあります)、一枚ずつチラシを取って右から左、あるいは左から右へと進んで行き、全てを重ね合わせたらプログラムあるいはそれに代わる何かにはさみ、きれいにそろえる。

それを目標枚数(たいていは予定入場者数より若干少ない数です)までひたすら繰り返すのです。この作業にどれぐらいの時間がかかっているか。時と場合によりますが30分~2時間ぐらいです。作業する人が多ければ多いほど早く終わります。少なければ少ないほど時間がかかります。作業する人が慣れていてるかどうかによっても時間の長さは左右されます。

私のような歴戦の超速猛者(自己調べ)であれば、この作業のためゴム製の指サックを用います。あるいは「指先滑り止め」と呼ばれる、なんというのでしょう、保湿剤のような、さらにそれをずっと固くしたようなものを手につけながらやります。こういうのです

マイ指サック、マイ指先滑り止め、もちろん持っています。挟み込みに来て!と言われたら持参します(忘れることも多々あります)。これがあるのとないのとではスピードが全然違う。歳を取るとな、手の脂がなくなってめくれなくなるのや。スーパーのビニール袋もよう開けられんのや。そんな悩みもこれらが完全解決してくれるのや!!ワッシャー!!!

ゆっくり作業が出来ればそれがベストですが、コンサート前っていうのは時間との闘いでもあるので、効率的に出来るこのようなグッズが好感度高め。なお、さらに強力なグッズもあって、それは丁合機と呼ばれるマシーン。これは200万円とか300万円とかする高値の花で、ちらしを一気にガチャコンガチャコンまとめて挟んでくれる優れもの。ああこれがあるとつらかったあの挟み込み作業ともお別れ!ただし高額かつ重くて持ち運べないので、この機械を使えるという主催者は全国に数えるほどしかないと思います。

そもそもなぜ、チラシをプログラムに挟んでいるかというと、先に書いたとおり「それが絶対確実にチケットをたくさん販売する」からです。ホールのどこかにちらしを並べておけばいいじゃない。だめです。いや、だめとはいいません。効果はあります。しかし限定的。

プログラムに挟んでおくことで限りなく確実に、ちらしを目にして頂けるのです。たいてい挟まれているちらしは、その公演に関係のあるちらし、つまり同じ会場や同じ演奏家、演奏団体、あるいは似たジャンルの公演に絞られている事がほとんどなので、効率も高いというかその会場に来て頂いているお客様の購買意欲にヒットしやすいんです。

つまり、本屋で特定のジャンルの本棚を物色している、チラ見しているような状態を作り出すことが出来るというわけです。

そんなことしなくてもファンなら情報をとりにいく、チケットを買うぜ!というのは、残念ながらごく一部の熱心な人だけなのです。私を含め人間という物は基本怠け者ですから、自ら情報を取りに行くことはあまりない。ホールのホワイエにチラシがあっても、取らない。

そういう人たちにも来て頂かなければ会場は残念ながら埋まらない。なのでやるのです。ほっといても売れる公演であればもちろん不要です。究極そんな公演はちらしをそもそも作らなくていいので、やる必要はありません。が、そういう公演は残念ながらクラシック音楽に関して言えば「ほぼない」のです。

なので挟んでいる。

「御社の●●公演に弊社の△△公演のちらしを、挟んで頂けませんか?」

という問い合わせが今日も活発に行われています。そして

「いいですよ」
「◇◇日必着で◎◎に送って下さい」
「挟み込み作業は○○時からやるので人を出してください」
「代わりに△△公演に弊社××公演のちらしを挟んで下さい」
「置きちらしでおねがいします」
「出演者の関係するものに限定しています」
「一律お断りしています」

これらのテンプレを使った回答がさかんになされます。

今後もこれがなくなることは恐らくないと思います。なぜなら、繰り返しになりますけれど、券売に関しては、手に取ったちらしというものが持つ力はめちゃくちゃある。それが理由です。デジタルじゃやっぱりダメなんすよ。というか、デジタルだけではペイするほど売れないのが現状なんですよ。

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