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スマホとクラシック音楽コンサート問題を考える。完璧な対処法はあるか?

クラシック音楽のコンサートは静かです。客席はずっと静か、そして音楽も(うるさいときもありますが)静かな時間が長めです。ロックやポップスなどとは比較になりません。基本は生音だし、静かな音で進行する瞬間がまたクラシック音楽の醍醐味でもあり、シーン!という瞬間とシーンシーン!!の間を行き来していることもしばしばです(主観で雑に書いています)

そこで問題になりがちなのが、スマホを代表とする「ノイズ」です。いわゆる音楽以外の音が演奏中に客席発で会場に流れる現象ですね。これによって何が起こるのかというと、ホール内の集中力がガクッと落ち、会場内に気まずい雰囲気が醸造される。なんせ目立つからね。

スマホの着信音、目覚ましの音、これらが最も問題を引き起こしやすいっすかね。携帯電話を人々が持つようになって20年は経つと思いますが、一度たりとも根絶されたことのない問題です。クラシック音楽専門のコンサートホールではわざと電波妨害して電波が入らないようにする装置が導入されているところも少なくありませんが、それでも電波がすり抜けて着電することもあるし、そもそもなぜかアラームをその時間に設定している人もいるので、電波をカットしていてても油断は出来ぬ。

しかしどうかどうか、舌打ちをする前に考えてほしい。あなたがたのうち罪を犯した事のない者だけが石をなげなさい、という言葉を思い出してください。自分だっていつ音を発する側に転落するか判らないのである。自分だけ得意げに舌打ちしたり、発信源の人物に平手打ちをするのは(そんな人はいないか)結局のところ自分に唾するのと同じなのである。人は本質的に不完全なのだ。なんなら演奏側のスマホが鳴ることだってある。神は人間を不完全につくりたもうた。

なのでスマホはこれまでも、これからも鳴り続ける。これは絶対だ。

同じように静寂が好まれる美術館なんかは、同じ空間にいる人の数は少ないし、人は動いているし、同じ物を見ていないので、そこまで問題にならない。しかしクラシック音楽のコンサートの場合、静まりかえった状態で、大ホールなら2000人とかそれぐらいの人たちが同じ音楽を鑑賞して同時に時間が進行しているのであって、そこにピコピコパーのパッパッパーと脳天気な音楽が侵入してくると(脳天気でなくとも)、全員が絶望のあまり頭をかかえる。

ではその完全なる対処法とは、何か?

ないです。

ずっこー、とここまで期待しながら読んできた人を転ばせて申し訳ございません。でも、完璧な対処法なんてないっす。

おとといのアメリカ、フィラデルフィア管弦楽団。指揮はヤニク・ネゼ=セガン。演奏していたのはブルックナーの交響曲第9番の第3楽章。ここまで書いたらもう「あかんやつや」ってお察しいただけると思うんですけれど、とりわけマニアが集まりがちな演目で、しかもこの曲の3楽章っていうのはピーンと張り詰めた空気で進行していく、ああブルックナーはこの曲を書き終えられなかったのだ!頭蓋骨ラブ!!って心の中で言いながら心の中で嗚咽しながら聴く(よくわからんがキモいな)のが心地よい音楽だ。しかも30分あるよ。30分!!ゲー!と思ったあなたは正しい。長すぎるんすよね。現代っ子には。その上30分の後にテ・デウムもやったんだってさ(さらに長い)。

そんな饒舌の30分が始まってすぐのこと、なんと客席でスマホが鳴ったのである。指揮者は演奏をやめ、最初からやりなおす。するとまたすぐにスマホが。

さすがの2度目には(恐らく)イラッとして指揮者は「1時間ですらスマホの電源を切れないのでしょうか」と聴衆に向かって語ったのだという。

Fed up with ringing cell phones, Yannick Nézet-Séguin stops Philadelphia Orchestra music mid-concert — twiceThe Philadelpia Inquirer
https://www.inquirer.com/entertainment/classical/yannick-nezet-seguin-ryan-speedo-green-kimmel-center-20230507.html

これは気まずい。

指揮者が音楽を止めて聴衆を叱る。これは私としては絶対によくないと思うんですよ。「クラシック音楽こえー。指揮者って何様?神様?これ公開処刑?自分もやられる?」となって、初めて来た人は確実に引く。足が遠のく。

新聞によれば、ネゼ=セガンは腹を立てたわけではなく「新しい聴衆を歓迎し続けたい。この言葉は好きではないが来てくれた人たちを教育したい。コンサートという儀式を受け入れてもらいつつ、新しい聴衆を歓迎し続けたい」というメッセージを寄せたそうですが、それを読む人はどれだけいるか?ほとんどいないでしょう。特に初めて来たお客様は「クラシック、こわっ!」て思ったはずです。

マニアだけ集まれば良い、と言う暴論を振りかざす方もおられますが、マニアだけでは客席は全然埋まりません。ペイしません。ソフト層が集まるから奇跡的に持続可能性がなんとか生まれているので、ソフト層を遠ざけようとするのは悪手中の悪手なのです。やめてけれ。

ではどうすればいいのか。黙ってやり過ごすか?スマホが鳴り続けるのを我慢しながら演奏を続けるもしくは聴き続けるのが正しい?これは体験としての価値がダダ下がりになるので残念だ。

中国でやっているみたいにスマホをホール内に持ち込ませない?しかしこれが成功すれば誰も困りません。スマホをホールスタッフに渡すことを拒絶する人もいるでしょう。そしてスマホをわたし損ねる(複数持ち、鞄の底にあったなど)ケースもある。それに回収と返却の手間がかかりすぎるので、あまり現実的とは言えない。

「スマホの電源切って切って」とアナウンスし「スマホ電源切りなはれボード」を持って座席をぐるぐる回る。これも効果はあるでしょうが完全でもない。見てない人、聴いてない人、無視する人がいる。

では演奏を中断して何かジョークを言うか?そういうケースも実際にあり、うまくいくこともある。「しゃーねーな」という雰囲気が生まれるので、解決策としてはなかなかベターかもしれませんね。でもジョークが不得意な音楽家もいれば、壮大にスベることもある。「もしもしー、パパは演奏中でーす、一時間後にかけ直してね」。・・・・・・これは痛い。

というわけで、スマホ問題は完全な対策がとれないのです。であればやはりというか、「何もノイズがおこっていないかのように進行する」(みんなでなかったことにする)が一番ベターでスマートな対応ではないか、というのが私の現在のところの考えです。

そうカッカすんなって。そもそもフィラデルフィアって単語はギリシャ語から来ててね、「兄弟愛」っていう意味なんだよ。そう。愛だよ、愛。

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