現代音楽のよい聴き手とはいえない私ですが、その私もよく名前を知っている作曲家の一人。フィンランド出身の世界的作曲家カイヤ・サーリアホが昨日朝、パリの自宅で静かに息を引き取ったそうです。1952年10月生まれ。享年70。アメリカのメトロポリタン歌劇場で複数のオペラが上演された唯一の女性作曲家。
最後の作品は3月末に完成したトランペット協奏曲《Hush》。初演はこの8月24日にスザンナ・マルッキ指揮フィンランド放送響のコンサートで行われる。ソリストはヴェルネリ・ポーヨラ。Hushという単語が「静寂」という意味を持つのはなんとも象徴的。日本初演も可能な限り速やかになされることを期待したい。
Kaija Saariaho, Pathbreaking Composer, Is Dead at 70 – New York Times
https://www.nytimes.com/2023/06/02/arts/music/kaija-saariaho-dead.html
Kaija Saariaho: Feted Finnish composer dies at 70 – BBC
https://www.bbc.com/news/world-europe-65785594
本人のFacebookに、夫、そして娘2人の名前で出された文書が掲載されています。
死因は脳腫瘍。2021年の2月に進行性の「膠芽腫」という特に悪性の腫瘍があることを診断され(マイケル・ティルソン・トーマスもいま同じ腫瘍と闘っている)、診断の時から治療が不可能であると宣告されていたという。仕事に集中するため彼女はそのことを一般には伏せ、強い意志で病気と戦い続けた。
日本にもちょうど2年前、東京文化会館でオペラが上演され、それにあわせ来日していた。おだやかな笑みですが、この時すでに不治の病におかされていることを本人は知らされていたということですね。
腫瘍は彼女の認知能力を妨げなかったが、身体の右側の運動能力を侵していき、転倒する、杖をつく、車椅子で移動するなどの姿が一般にも見られるようになった。しかし健康を心配した質問があっても、病について語ることはなかったそうです。
NYタイムズには「後日より詳しい訃報を掲載します」とあり、その死が予期せぬものであったことがわかります。新聞関係者にとっても急なことだったのでしょう。
ご冥福をお祈りします。
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