世の中から「女性指揮者」という言葉がなくなること、それがゴールなんだと思います。
つまり指揮者というものは男性の職業でもあり女性の職業でもあるという認識が世の中に完全に行き渡り、別に改めて男性指揮者とか女性指揮者とかいう必要がない、そういう状態のことです。
電車の車掌さん(なお指揮者も車掌も英語で同じ単語、コンダクターであります)も、私が子供の頃は男性しかいませんでした。今は女性の方も大勢おられて、男性か女性かはもはや誰も気にしない。それこそが自然なことなのです。さらに言えば、黒人、黄色人種など人種によってわけて考えられる事もなくなることを願っています。
現在はというと、まだまだ過渡期であります。女性は指揮が出来ないとする男性演奏家ももしかするとまだいるかもしれませんが、徐々にそういう意識も薄れつつあります。聴衆も、けっ、女性指揮者などという人も減ってきているでしょう。沖澤のどかさんのように今後の国際的なキャリアの可能性を持つ日本人女性指揮者も現れてきており、実に喜ばしいことであります。
というわけでBBCプロムスなんですけど。
BBCプロムスとは、ご存じの方はご存じですがご存じない方はご存じないかも知れない(当然)、夏のロンドンのイベントでして、まあ東京でいったら武道館みたいな場所をメイン会場にしていて、そこでクラシック音楽のお祭り騒ぎを何週間もやるわけです(今年は7月14日から9月9日まで)。会場はロンドンのロイヤル・アルバートホールといって、5000人ぐらい入る。平土間は立ち見。私は昔から立ち見はしんどくて集中できないんですけど、若い人や体力がある人たちは立ち見で楽しむのだ。
このプロムスでまた画期的な出来事が起こると。
何かというと、最初のオープニングコンサート、それから最後のクロージングコンサート、これらはいずれも重要な位置づけの公演なんですが、史上初めて、両方を女性指揮者が指揮するっちゅう話ですわ。
BBC Proms to be opened and closed by female conductors for first time – RadioTimes
https://www.radiotimes.com/tv/entertainment/bbc-proms-2023-female-conductors-newsupdate/
オープニングコンサートはダリア・スタセフスカ、クロージングはマリン・オルソップ。オルソップは女性スター指揮者のはしりみたいな存在です。去年お話をさせて頂く機会があったんですけれど↓
「私は女性指揮者として暗闇の中に飛び込んでジャンプするような人生だった」と言われて、ほーー!と思っていたところがさらにそこに続けて「両足で絶対に着地できると信じていた」と発言されたのがめちゃくちゃ印象的。何かを成し遂げた人の持つ言葉の重みが、ここにある!!
BBCプロムスにおいても女性の活躍がますます目立ちます。「女性が輝く」という言葉の本当の意味での実践であります。
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