ポリーニがついに。82歳。
クラシック音楽が好きという方であれば、それぞれがそれぞれの思いを持って訃報に触れられたと思います。
私にとっては最もCDを聞いたピアニストの一人。18歳で優勝したショパンコンクールではルービンシュタインが「すでに審査委員の誰より優れている」と言ったとか言わないとかいう話。優勝した後もミケランジェリのところに習いに行き、研鑽のために何年も活動しなかったという話。そのほか、ものすごいヘビースモーカーらしいぞとかいうような話。ポリーニが好きすぎてミラノにまで突撃してお話をしたとかいうファンの人の話。シュトックハウゼンのほうがベートーヴェンより簡単です、と言ったとかそういうような話。
CDではペトルーシュカからの3楽章やウェーベルン、ブーレーズとか、モーツァルトの協奏曲とか、ショパンの練習曲集とか(レコードの方が音がいいらしいぞ、というようなうんちくも聞いてレコードでふんふんいいながら聞いてみたりとか)、聴いたよね。マンツォーニの質量っていう曲はカセットでダビングさせて貰って、判らないくせになんどもリビングで聴いて親に嫌がられたりとか、そういう思い出。
実は私はそれほどポリーニの大ファンとまでは言えなくて、特にものすごくながーく時間をかけたベートーヴェン全集は全く好きになれなくて、最後の3つのソナタの録音を聴いて「はあ?」と思って見たりだとか(いやはや、生意気)。
完璧さが売りだったポリーニの技巧の衰えは早かったといえるかもしれない。そして何年か前に川崎で聴かせて頂いたときはもうボロッボロだったけどお客様は大喜び。そう、音楽っていうのは鳴っている音だけではないのだ、人が感動するというのはそれだけではないのだということも教えてくれた存在。
昨年のミラノ・スカラ座のリサイタルにはわざわざミラノ在住の兄から「聴いてきたで」というLINEも来たんすよ。クラシック音楽にほとんど詳しくない兄でさえ、いってみよっか、と思うような、そういう存在。
ブレンデル、アシュケナージ(この二人はご隠居生活)、ポリーニ、そしてアルゲリッチ。このあたりが私にとって中高生からのもっとも大きな存在の(1930年代、40年代出身の)ピアニストです。
アルゲリッチは元気に今年も来日するはず。アルゲリッチがいつまでもお元気で、強烈なシューマンやプロコフィエフやラヴェルやベートーヴェンを弾いてくれることを願います。
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