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オペラではオーケストラはピットで演奏する。それは(舞台が見えないので)退屈なのかどうか問題

Photo: Professorcornbread (CC BY-SA 4.0)

オペラでオーケストラは「ピット」で演奏するのは退屈なのか論争、みたいなのがニューヨークで起こっておりまして、世界屈指の歌劇場の一つメトロポリタン歌劇場が若干揺れているというか、ゆさゆさ、ガタガタしています。いや、ガタガタでもなくてカタカタ、あるいはカタッぐらいかもしれませんけれど。

18世紀、モーツァルトが活躍していたような頃は、オペラにおけるオーケストラは客席(いわゆる1階席)と同じ高さに配置されていたみたいですけれど、いつの間にか舞台よりもかなり低い位置に配置されるようになり、いまではそれが通常ということになっている。オペラでオーケストラが座っているところをオーケストラピット(ピットは「くぼみ」とか「穴」の意味)と言いますね。オケピと略すこともあります。

なので、オペラにおいては通常オーケストラ奏者はお客様からはあまり~ほぼほぼ見えないわけであります。それを今回のメトロポリタン歌劇場ではピットをもっと高いところにもってこようぜ、ということになった(もちろん初めての試みというわけではありません)。

オーケストラ奏者にも相談がなされたのは確実です。イレギュラーなことについては常に確認とディスカッションが必要ですから。「オケピを上にしたいと思うけどよろしいかどうか、伺います」「審議するからちょっとまってね・・・。はい、いいです、ただしかくかくしかじか・・・」そういうようなやりとりがあって、いざ上へ、ということになったのでしょう。

ところがである。ここにきて問題が勃発したんですよ。指揮者(ナタリー・シュトゥッツマン)が新聞のインタビュー中に「オーケストラ奏者として舞台で何が起こってるかわからない洞窟の奥にいることほど退屈なことはないですよね」とうっかり発言して、オーケストラから大反発を喰らった。

This ‘Magic Flute’ Has Ringtones, Bird Tracks and a Foley Artist – The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/05/18/arts/music/die-zauberflote-simon-mcburney-metropolitan-opera.html

オーケストラ曰く「ピットで過ごす時間は退屈でもなければ洞窟のようなものでもない」と。そして指揮者は公式に謝罪することとなったわけです。そしてそれまた炎上。これは女性差別だとか文脈の切り取りとか、謝罪しているようで謝っていないだとか、そもそも指揮者がひどかっただのいや素晴らしかっただのオーケストラが偉そう過ぎるだのと、これを報じたレブレヒトのブログのコメント欄は荒れ気味。

私が勝手に想像するに、ですが、指揮者の発言には悪意はきっとなくて、ニューヨーク・タイムズのインタビューに答えているうち、おもしろいことを言おうと思ったというか、イレギュラーな演出について何かポジティブなことを言わんとして口にしたのだと思うのですが配慮が足らなかった、と言うことなのではないでしょうか。

「普段は君ら何も見えんやろ、つまらんやろ、だから今回上に上げたったで、良かったやん」。そういう風に読まれることもありうる。そしてそうなってしまった。しょうがないな、苦笑いで済まそっか、となればよかったんですが、残念ながらがっつり噛みつかれ、このSNS時代なんでぶわっと拡散し、すっかり「うっそ、こんなはずでは・・・・・・(本人当惑)」、ということなんだと思います。

コミュニケーションの難しさですね。そして口は災いの元であります。指揮者はそもそも「他人に演奏して頂いて音楽をやる」という特殊な立ち位置の職業なので、コミュニケーションの難度はさらに上がるわけです。

私めも恥ずかしながら申し上げますと口を滑らせることが多いので、決して他人事でもなんでもないですね。むしろブルブルッと震えました。気をつけます。ごめんなさい。

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