ストリーミングのメタデータに「オーケストラ奏者の名前を掲載すべし」とする新ルールがイギリスで制定

ストリーミングのメタデータってなんなの、って思った方もおられると思うんですよね。私も自分がそんなにしっかり理解できているとは思わないんですけれど、要するにオンラインで音楽を聴くときに「ベートーヴェン 交響曲第9番」と検索すると、ずらーっといろいろな録音が出てきますやんか、そこに例えば「指揮者の名前」とか「オーケストラの名前」とかでさらに絞り込めるようにする、そういうデータですね。バーンスタイン、とかキーワードを追加して絞り込みができるようにするためのもの。

あと、ポップスと違ってクラシックの交響曲には楽章があるし、組曲なら複数の曲で構成される。だから「展覧会の絵」と入力して中に含まれる曲が順序バラバラで表示され実際にめちゃくちゃな順番で演奏されることになることはあまり望ましくない(絶対ダメですわ!!っていう人も多いかもしれない)ので、順番も決めてほしいっすね、みたいな話でもあったりするんだと思います。

さて、そのメタデータにですね、イギリスの話ですけれど、オーケストラ奏者の名前も入れるべきであるという議論があって、今後はどうもその方向で動いていくようなのです。

RIGHTS WIN: ORCHESTRA PLAYERS WILL BE LISTED IN NEW RECORDING METADATASlippedisc
https://slippedisc.com/2023/06/uk-orchestra-players-will-be-listed-in-new-recording-metadata/

これはイギリスの音楽家たちの大多数がフリーランサーであるということも関係するんだと思うんです。オーケストラにきっちり雇われ、給与が支払われている、という人はあまりおらず、だいたいフリーランサーなんだっていうのはこないだもイギリスのオーケストラプレイヤーから聞いて知った。「ペンション(年金)はないの?」と聞いたら「ない」って笑って言ってて、なかなかきついな!おい、笑ってる場合か!!シニカルに笑う、それがイギリス式さ。

なので、フリーランサーとしてはやはり、自分にもお金が落ちてほしいと思うのは当然のことだなと思うんですよ。行け!ゴーゴー!とは思うのですが、ちょっと待てよ。メタデータの入力って死ぬほどめんどくさいですよね。めんどくさいよねっていうこと、みなさんも同時にご理解いただけると思うんですよね。

オーケストラ奏者60人分とか70人分とか、オペラとかだったら200人とか?そういう数の演奏家の名前を、ミスタイプなく入力して、ダブルチェックしていく。しかも、同姓同名の人がいたらそれも区別できるようにしないといけない。名前だけでは不十分で、誕生日とか、国籍とか、過たずその個人を特定するため、メタデータのメタデータっていうんですか、そういうものも入れなければならない(個人情報だけに表に出すわけにはなかなかいかないですよね)。

さらに言うと、トラックごとに参加している人の数が違う場合はどうする?シンバル奏者は《新世界》では4楽章の1発しか演奏しないぞ?シンバルが落ちてる(叩き損なった)ライブ録音はどうなる?

さらに言うと、いったん入力したものが間違っていると、すなわち「ジョン・スミスさん(A)」と「ジョン・スミスさん(B)」をとり間違えていたら、永遠に間違いが続くよね?Aさんに未払い、Bさんには過払いが発生するぞ。そういうのが発見された場合、どうするの?誰に責任があって、その誤払いをどう修正する?

考えただけでクラクラします。

しかもそれだけ一生懸命やってですよ、無事に過たず実現出来たとして、そもそもいったいその演奏者にはいくらお金が落ちるのでしょう。年間数セントとかだったりして?

とか考えると、それって意味ある?限りない徒労のでは?とも思えるんですがどうでしょうね。あと、オーケストラ奏者がもらえるんなら事務局は?とか、録音チームは?とかそういう話にもなっていきますかね。そうなるとどんどん権利者の数が増えていって、ますますパイは小さく、ミトコンドリア以下のサイズに・・・・・・そのような気もします。

とはいえ、権利は権利だもんな。

そうだ、AIに入力してもらったらいいんじゃないの?(わりと真剣に)

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