スティーヴン・グールド(ステファン・グールドとも)は日本でもその名を知られたアメリカの大テノール歌手。胆管癌と診断され、余命10ヶ月、治療法なしという状況だそうで、公式サイトでファンに別れを告げています。
Stephen Gould
https://www.stephengould.org/
「ファンの皆さん、そして応援してくださる皆さん:2023年のバイロイト音楽祭に関わっている人々の途方もない努力を妨げないよう、音楽祭が終わるまでこの発表を待っていました。ヴェルクシュタット(実験工房=バイロイトのこと)がさらなる卓越性を目指し日々努力を惜しまないことに喜びと称賛の念を抱いています。
私は胆管がんであると診断されました。余命は数ヶ月から10ヶ月で、治療法はありません。
バイロイトには、この偉大な音楽家の作品に関して知るべきすべてを教えてもらいました。感謝しています。
多くの思い出とともに。スティーヴン・グールド」
いま61歳ということなので、歌手としてはそろそろオペラからの引退、という言葉も見えてくるかもしれないが、まだまだ現役でも、という年齢でもあります。
今年の夏のバイロイトにも《タンホイザー》、《トリスタン》のタイトルロール(主役)、そして《神々の黄昏》のジークフリート役で出演するはずだったのが、「健康上の理由」で出演をすべてキャンセル。そしてバイロイトが終わるまで発表を待ったのは、音楽祭に対するリスペクトからだと思います。自分の個人よりもワーグナーを優先させる。プロフェッショナル。
グールドはいわゆるヘルデンテノールと言いまして、ヘルデンってなんなのかと言いますと、ドイツ語でもともと英雄という意味。「英雄的でドラマティックな歌唱を聴かせる歌手」、などと定義されます。これは声が高いとか低いとかではなくて、パワフル系の(と書くと少し違うような気もしますがまあ大筋では)、スポーツの階級でわけるならヘビー級とか無差別級とかそういう感じかなと。ワーグナーが書いた分厚く音量のあるオーケストラ、その上を突き抜けて客席に声を届かせることの出来る、そういう感じのテノール歌手。それがヘルデンテノール。
英雄に相応しく、潔くその日を待つ、という感じでしょうか。私たちに出来ることはないけれど、残された日々が平安であることを、そして願わくば奇跡的な回復を遠く日本からただひたすらにお祈りいたします。
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このところ、訃報が続いて、暗澹としてしまいますが、ステファン・グールドのこの記事は、途方に暮れてしまい、とてもとても悲しいです。東京で彼のワルキューレに、生で接したこともあり、何としても立ち直って欲しいです。