オペラが引っ越しするとはどういうことなのか

日本では文化庁が京都に行っていますがその実際はどうなのでしょうか。イギリスではイングリッシュ・ナショナル・オペラがとうとう2029年までにマンチェスターに行くということが決まって、関係者に動揺が走っているようです。

ENO and Greater Manchester announce plans for new home in city region – English National Opera

マンチェスターはイギリス第6番目の都市で、ロンドンからだいたい300kmぐらい北にいったところにあり、日本の東京から300kmと言えば仙台とか山形とか新潟手前とか、そのあたりぐらいの距離になります。もちろん完全に別個の都市圏と考えられます。

地方振興の意味合いもあると思いますけれども、長く働いてきた人々にとっては大きな転換となる。ロンドンから引っ越しますか、単身赴任しますか(家族がいる場合)、それとも辞めますか。ということになります。

課題は引っ越したあとにもあります。聴衆は劇場や地域に結びついているもの。イングリッシュ・ナショナル・オペラ大好き!という人はロンドンを中心にたくさん居られることと思いますが、マンチェスターには物理的に通えない(ロンドンでの上演も続けるそうです)。そしていきなりマンチェスターでファンが大量に獲得できるかというと、そう簡単ではない。数年あるいは10年ぐらいをかけてじわじわとファンを増やしていかなければいけません。そもそも人口も少ないのでロンドンと同じぐらいの数のファンを獲得することは困難極まる。つまりチケット収入の低迷が想像されるわけです。芸術は金じゃねえんだわ、というのはそうなんですが、お金がなければ何もできないというのは厳然たる事実です。芸術も金です。

ロンドンから出て行くということは、そこで働いている人にとっても、そして収入面でもかなりの痛みを伴うことが想像されます。これぐらいの荒療治をせんければならぬ、ということなのでしょうか。ロンドン一曲集中化はダメだよということなのでしょうか。

考えてみますた日本でも東京一極化は困った事だと思っています。クラシック音楽に関しても東京あるいは首都圏に一極化しつつあるような気がしています。とはいえ、じゃあ東京拠点の、国からの助成金を得ているオペラやオーケストラあるいは劇場を引っ越しさせるね、と言われると、うーむうーむと考え込んでしまいますね。

マンチェスターで素早くうまくなじめばよし、勝てば官軍ですが、うまくなじまなかったら?空中分解の危険姓もあります。もしかするとそれこそが狙いだとしたらあるいはそれもやむなしとしているとすれば恐ろしいことだ。それはさすがにないと思いたいですがね。

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