オーケストラはどこまで暗譜で演奏できるのか

オーロラ管弦楽団は暗譜で演奏することでも知られているわけです。ここで絶句・・・「はっ?」

オーケストラが?暗譜で?

そう、暗譜で。

若い人たちだから出来る、と言えるかもしれません。もしかするとベートーヴェンのピアノソナタ1曲を暗譜で演奏するよりもはるかに困難かもしれません。リストやクララ・シューマンが始めたと言われる暗譜演奏。近年は暗譜なんて必要ないんちゃうのという意見も徐々に定着するようになってきて、本当によかったって思っています。

いや、別に暗譜で弾くのを悪だと言いたいわけではなくて、多様性ですね、多様性。「暗譜で弾いたほうが集中できる、開放される」という意見もあれば「楽譜を見たほうが集中できる、開放される」という真逆の意見もあるだけ、ということです。

しかしオーケストラが暗譜で演奏するっていうのはどれだけの困難を伴うものなのでしょう。ストラド誌によりますと、イギリスのオーロラ管弦楽団は2014年以降、10曲の交響曲を暗譜でこれまでに演奏したとあります。

https://www.thestrad.com/playing-hub/by-heart-with-heart-memorising-an-entire-symphony/13955.article

そのうちの8曲は少なくとも彼らのウェブサイトに出ていたので確認できました。

モーツァルト:第40番、第41番
ベートーヴェン:英雄、運命、田園
ブラームス:第1番
ショスタコーヴィチ:第9番
ベルリオーズ:幻想交響曲

オーケストラで演奏したことのない私にはまったく理解が及ばないですが、楽団員が打ち明けているところによれば「人によって難しさが違う」そうで、そりゃあそうだろうなと思います。いわゆる自分の入りがわからなくて「落ちる」も多数発生しそうだし、間違った音符を弾いてしまう事件も多発しそうだし、いわゆる「崩壊」「全停止」の危険もより強くはらんでいるわけで、そういう意味でも手に汗握る!!コンサートとなることは間違いがない。新しいオーケストラの楽しみ方、ということにもなりますでしょうか。より音楽に集中できるかもしれないし、より音楽の深みを探訪できる、のかもしれません。

しかしこういうのはどんどん先鋭化するというか、過激化、つまり「いいぞもっとやれ」になって、最初はモーツァルトとかだったのが、もっとずっと複雑な音楽へと進んでいく方向に行きがち。チャレンジ精神がぐんぐんと発動して複雑な方へと進んでいかざるをえなくなるだろうとも思うわけです。次はどんな曲が・・・と、想像しただけでハラハラドキドキさせられるわけです(いいぞ、もっとやれ・・・!!)。

いまのところショスタコーヴィチ止まりだけど(ショスタコーヴィチが9番と一番短い曲なのはやっぱり、というか、そうだよね、とちょっと胸をなでおろすわけですが)、野心的な計画をあえて立てるなら、そう、こういった曲が話題を呼びそうですね。

・ストラヴィンスキー《春の祭典》
・ワーグナー《指輪》全曲
・ブーレーズ《プリ・スロン・プリ》

どれも地獄行きの片道切符のような気もするんですが、でもブーレーズのピアノソナタ2番だって暗譜で演奏する人、いますよね?(すっとぼけ)

コメント

コメント一覧 (1件)

  • この間の二期会「パルジファル」では、ピットの明かりが消えて、半分くらい?の奏者は演奏を止めたらしいです。しばらくして復旧し、音楽は止まらずにすみましたが。暗譜はしてなかったようです(笑)

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