ギルモア・アーティスト・アワードというのがアメリカにありましてですね、太っ腹30万ドル(約4400万円)が貰えるっていう、ピアノの賞としては強烈な賞であると同時に、秘密の調査員数名が長期にわたって調べ、各国のコンサートに通い、「今後の音楽界に真のインパクトをもたらす可能性」を持つピアニストを、4年に1人だけ選ぶって言うどえりゃーやつなんですよ。
ピアニストのためのミシュランと言ってもいいっていうか。一生に一度しか貰えないからミシュランとは違うし、ピアニストはレストランみたいに一カ所に留まっていないけど、でも選考プロセスはミシュランみたいですよね。
秘密の調査員がいて、いきなりの合格発表。チャイコフスキー国際で優勝し、世界のピアノ界をリードし始めているアレクサンドル・カントロフについても、イタリアでランチに誘われた人物から「君、合格」って言われた。いったいこの人は誰なんだろう、と思っていたらまさかの合格発表。
Alexandre Kantorow reçoit un prix de 300.000 dollars – Diapason
https://www.diapasonmag.fr/a-la-une/alexandre-kantorow-recoit-un-prix-de-300-000-dollars-40442.html
ねえ、いまこの瞬間はどういう気持ちだい?晴天の霹靂、驚き、感謝、感激、茫然自失、号泣、おーいおいおいおいおい(泣くやつはいないか)。なんせこれまでにこのギルモア・アワードを受賞したのは世界中のピアニストのうちたった8人しかおらず(カントロフが9人目)、しかもその受賞リストにはアンスネス、アンデルジェフスキ、レヴィット、フリッター、ゲルシュタイン、ブレハッチほか(ほかでまとめたお2人ごめんなさい)がいる。その存在感の強さが光るピアニストばかりだ!
しかもこの賞のさらにユニークなところは、5万ドルはすぐにもらえる、残りの25万ドルは自身のキャリアや芸術性を高めるためにプレゼンか何かをして、承認を得た上で貰えるんだそうです。なめ腐ったやつにはやらんぞ、そういうことでしょう。そう、芸術もなんでも同じ事だが、登っていくのは難しいが落ちるのは一瞬。こうして課題を与え、さらなる上を目指そう、とするのは本当に素晴らしい支援だ。ふざけんなごちゃごちゃうるさいわ、ほんならいるかボケ!みたいなケンカ別れにならない限りな。ああ、けんかはヤメテ!!!
カントロフは、インタビューによれば「持続するもの、なにか具体的なもの」を考えており、映像プロジェクト、あるいは音楽家たちが練習したり集ったり出来るスペースのようなものも考えているという。や、それは・・・25万ドルで足りるかな・・・・。だがぜひなにか素敵なことを実現してほしい。昨日のような景気の悪い話じゃなくて、こうして景気のいい話は大好きだ。
うちはミシュランの星が内定しているからと豪語したシェフに爪の垢を煎じて飲ませたいものだ。
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