The Fukuoka pianoという文字を目にして、福岡さんのピアノがどうかしたのだろうかと思った私が悪うござんした。確かに福岡は間違ってはいませんでしたが、福岡県のことで人名ではありませんでした。
福岡県のサンパレスホール(当初は福岡市民会館)にあった歴史的にとても興味深いピアノが話題になっていたのでした。もともとは3週間前に西日本新聞に出た記事(見逃していましたすいません)。それがジャパン・タイムズ紙に掲載されて、さらにそれを見つけたピアニスト誌が紹介している、という感じかなと思いました。
https://www.pianistmagazine.com/news/piano-covered-in-famous-pianists-autographs-set-to-be-restored/
福岡サンパレスにひっそりと眠る、いまは使われていない1963年製ハンブルク・スタインウェイには一流音楽家たち38人のサインが書かれていて、そこにはアルトゥール・ルービンシュタインやヴィルヘルム・ケンプ、クラウディオ・アラウ、エミール・ギレリス、ハリーナ・チェルニー=ステファンスカやリリー・クラウスといった伝説のピアニスト、さらにはロストロポーヴィチ(フレンド・オブ・セイジ)、フィッシャー=ディースカウ(バリトン)にシュヴァルツコップ(ソプラノ)の名前もある、という、かなり~相当~ものすごく~激烈に仰天の事実であります。
1人~数人程度のサインがある、というピアノなら見たことがありますけど、いやー、38人っていうのは聞いたことがないすね。すごいわ。しかも強烈な巨匠クラスが並ぶとなるとなおさらだ。このピアノを使って彼らがコンサートをしたっていうのが、なんとも想像力を掻き立てられますやんか。分かっているのは32人分で以下の通りだそうです。すげえ。ホールの記録からたどって調べたんだと思うんですけど、よく調べたなと思いますね。残りの6人が誰なのかもめちゃくちゃ気になるわ。
ドミトリー・バシキーロフ Dmitri Bashkirov
田中 希代子 Kiyoko Tanaka
アレクサンドル・デデューヒン Alexander Dedyukhin
ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ Mstislav Rostropovich
ジャン=ベルナール・ポミエ Jean-Bernard Pommier
アルトゥール・ルービンシュタイン Arthur Rubinstein
ジャン=ピエール・ランパル Jean-Pierre Rampal
ヴィルヘルム・ケンプ Wilheim Kempff
ヤコフ・フリエール Yakov Flier
ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ Halina Czerny-Stefańska
クラウディオ・アラウ Claudio Arrau
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ Dietrich Fischer-Dieskau
ギュンター・ヴァイセンボルン Günther Weissenborn
セルジオ・メンデス Sergio Mendes
スタンリー・ブラック Stanley Black
アダム・ハラシェヴィチ Adam Harasiewicz
エミール・ギレリス Emil Gilels
ハンス・リヒター=ハーザー Hans Richter-Haaser
クリストフ・エッシェンバッハ Christoph Eschenbach
ボラ・ロコビック Bora Rokovic
ビリー・ヴォーン Billy Vaughn
ヴァージル・エバンス Virgil P. Evans
ミルト・ロジャース Milt Rogers
殷誠忠(イン・チェンチュン) Yin Chengzong
アン・マレー Anne Murray
マイケル・ウルフ Michael Wolff
リリー・クラウス Lili Kraus
エリーザベト・シュワルツコップ Elisabeth Schwarzkopf
ジェフリー・パーソンズ Geoffrey Parsons
エヴァ・オシンスカ Ewa Osinska
張安麟(アンジュラン・チャン) Angelin Chang
アルド・フランク Aldo Frank
このピアノはルービンシュタインが、アラウが弾いたのだ、少なくとも数時間は触れていたのだ・・・!ギャビーン!!!「だからなんなんすか」と言われればそうですけど、おいおい、夢のないこと言うなやきみ。なんかぞわぞわするし、弾いたらなんかいい音がしそうだし、いや、(かなりの修理が必要とあるから)音はだめになっているのかもしれないけれど、それでもそのくぐもった音からルービンシュタインの《火祭りの踊り》や、アラウの《月光》、ギレリスの《熱情》なんかの音が聞こえて来るような気持ちになれるに違いない。イマジネーションの大炸裂は必至!!
世の中のコンサートホールのピアノには、すごい天才達が弾いてきたという歴史があるわけですが、このようにして可視化されて残されるというケースは、記事にも書かれているけど極めて稀でしょう。ピアノが稼働してた当時の担当者が気を利かせたということでしょう。「そうじゃ、ピアノにサイン書いてもらえばいいばい」(ニワカ博多弁に誤りはございませんでしょうか、先にお詫び申し上げます)。
結果、こうして将来になってニュースで取り上げられ、それが海外でも報道されるということになったのであります。しかし英国の雑誌、ピアニスト誌がどのようにしてこの記事を見つけてきたのか、という点はちょっと気になるところであります。SNS時代の産物なのか、担当者の検索レベルがSSSクラスなのか。
ピアノは1800万円かけて修復され、福岡の美術館に移され、第二の人生を歩むことになっているそうであります。1000万円目標のクラウドファンディングもやっているので、誰でも修理に参加することが可能であります。っていうかクラウドファンディングのページが一番詳しくて、写真つきでいろいろ書いてあるんで、読みに行って大興奮してください(興奮してしまったあなたは残念でした、ピアノマニアです)。
https://greenfunding.jp/linkstart/projects/6295
むしろ「このピアノごと買いたい」っていうマニアの方もいるんと違うか。オークションに出したらなかなかの高額がつくんじゃないかとさえ思いますけどね。
コメント