世界を代表するピアニストの一人、ピリスが引退宣言をしたそうです。いつ。11月1日。どこで。母国ポルトガルのリスボンで。どんなタイミングで。カルースト・グルベンキアン財団が開催したエレナ・ヴァス・ダ・シルバ・ヨーロッパ賞の受賞スピーチで。ピリスはいま何歳。81歳。
つまり、公の場で、自らのスピーチのなかで言った、ということです。ピリスが引退を宣言するのはこれが2回目になりますが、1回目はコンサートビジネスに嫌気がさしたので、というような感じだったので、自分の気の進むままに演奏活動は結局のところ再開され、続けられていたわけですが、今度はどうだろうか。なんとなくの直感に過ぎませんけれど、これは本当に引退かもしれない、という風に個人的には感じています。
何をどう語ったのか、全文はわかりませんけれど(どこかにあるかもしれないけれどちょっと時間がなくて調べ切れていません)、ともかくそのスピーチの中で「演奏活動からは引退し、真実を探し求める根本的な変化の過程にある」と語ったそうです。「友人のみなさま、誠に残念ですが、しばらくのあいだ舞台から離れなければなりません。脳血管系の健康問題が生じましたが、これは兆候、あるいは警告だと考えています」とかたったそうです。
ふむ。これはもどってきそうな含みもあるか、と思ったのですが、そのあと、演奏活動からは引退しているが、コンサートという舞台をこえた、創造的かつ人文主義的なプロジェクトを探求し続けるつもりだと示唆した、ともありますので、自分のピアノ演奏はない、ということになりますでしょうか。
小さな偉人。ピリスの音楽は大好きなんですよね。しかし年齢に人は勝てない。やがては老いていく。その危うさ、壊れやすさが人間を人間としているわけですけれど、こうして現実に引退の言葉をみると、ピリスの場合は2回目の引退発言ですが、やはり残念な気持ちはにもなります。
ピアノの演奏からは離れるかもしれませんが、これからも素晴らしき舞台人でありつづけてください。


		
			
			
			
			
			
			
			
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