地獄の沙汰も金次第というではないか。世の中はすべてゼニで出来ている。ナニワ金融道しかり、カイジしかり、世の中は、人はゼニというものに吸い付けられる・・・・・・。
そんな夢のないことをいうなや芸術やろと言われるかもしれませんけれど、夢と現実の狭間に我々は常に立っていて、そこをいったりきたりしているのです。芸術家も一緒。お金を持つことで破滅する人もいるが、お金を持って豊かな生活を送る人もいる。なにより、余裕が出るんじゃないかなと思うんですよね。貧すれば鈍す。ぜひ皆さん、お金を愛していこうではないか。もちろん銭ゲバはだめよ。
さて、とある起業家がカナダの名門、トロント交響楽団を指揮して話題になっております。なんと40万ドルを払ったというのです。カナダドルのことだと思うので、今の日本円で4230万円ぐらい。
オーケストラはこの申し出を簡単に受けたかというとそうではなく、いろいろな意見があり、100年以上の伝統あるオケがこんなことを!と一部反発もあったようですが、結局受けた。なぜか、なぜならお金が足りないから。結局のところ、お金の話とは無縁ではいられないのだ・・・・・・。オーケストラが必要な年間予算はおよそ2400万ドル。チケット収入はそのうちのわずか38%だそうで、寄付金、助成金などでまかなわれている。そこにほいっと40万ドルが現れたらどうする・・・・・・。あなたが神様であったとしても、その申し出はありがたく受けるのではないか?
受けない、と、言い切れる人がどれほどいるでしょうか。あなたなら言えますか?私なら、どうだろう。言わないかな。もちろんいろいろな意見があって、それらに耳を傾ける必要はあり、様々な要素を考慮した上で、やっぱやめとこ、となることも十分にありうるわけですけれども。
しかも演奏したのがマーラーの2番という巨大作品で、詳しい人なら「あっ!」とここで思うわけですが、ギルバート・キャプランという、かつて大金持ちがマーラーの2番を指揮しまくった歴史もあり、その話ともいささか重なるわけです。ただ、今回の富豪は、ショルティに学んだキャプランのように誰かに指揮を師事したわけでもなく、マーラー2番を研究しているわけでもなく(詳しくはギルバート・キャプランの名前でググっていただけると)、自身のアマチュアオーケストラは指揮したことはあっても、プロオケは当然ない。しかもキャプランが初めてマーラー2番を指揮したのは40代、この人は70代後半。
団員の生々しいインタビューも掲載されていて、指揮者についていくのは大変だったとのこと。団員は皆がひとつになり、お互いに耳を傾けあった。なるほど、これはこれで団員にとって得がたい体験となった、ということでしょうか。お互いをきいて、アンサンブルをしようぜと見直すいい機会だったとか?
なお、このコンサートは指揮者マンドル・チャン氏が率いるマンドル・フィルが主催、40万ドルの内訳にはオーケストラの演奏料33万7000ドル(普通オーケストラはこんなに高くないということにご注意ください)、ホールレンタル料4万5000ドル、ソリストのギャラ1万5000ドル(これまた高額だがありえない値段ではありません)が含まれているという。
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