「親愛なるレニー」、バーンスタインの新たな伝記。必読

「人と音楽、その両方を愛している」と語るバーンスタインの言葉がすべてを言い表していた、と感じます。

バーンスタインという方は感情の振れ幅が尋常じゃなく大きかったのだろうなと、そう勝手に私は想像しています。音楽の天才に加えて、バーンスタインの感情が人々を大きく動かし、走らせたのだと思っています。その追体験が出来るというか、強烈な振れ幅にこちらもかき乱され、動揺し、気がつけば涙を流している。そういう本が、出ました。

親愛なるレニー: レナード・バーンスタインと戦後日本の物語 / 吉原 真里 (著)

これはすごい。近年読んだ音楽書の中でも圧倒的な印象を残したと言わざるを得ない。大傑作。

バーンスタインの、主に日本における活動を、そこに非公式に公式に深く長く関わった日本人2名によるファンレターあるいはラブレターとともに回顧していくという本。くらくらするような熱量とスピーディーな展開で、あっというまにこちらをバーンスタインの世界へと引き込んでしまう。

以下、ややネタバレになりますが、ホテルオークラのロビーで、つらい家族の病気に向き合っている女性の話を聞くや即座に抱きしめ号泣するバーンスタイン。今でもホテルロビーで人が抱き合ってワンワン泣いていたらさぞ異様に写ると思います。普通なら「おおぅ」と引いてしまうかもしれないところ。しかし、ところかまわず感情を爆発させるバーンスタインの姿に、読んでいるこちらの目頭はむしろ溶鉱炉のように一気にグワーッと熱くなる不思議!!それがなぜかは読めばわかる!

そして日本人男性からバーンスタインへのラブレターの数々。それがなんとバッチリ残されていたという衝撃。そして次々と明かされていくいくつもの情熱的な手紙。ええのか、こんな文章、目にしていいのか、と、密かにハラハラした気持ちを抱えながら読み進めていくことになります。プライベートな、赤裸々な、過去の恋文を白日の下に晒すというのはプライバシー的に大丈夫なことなのか?

最後に明らかにされるのですが、この日本人女性、日本人男性、およびバーンスタインの遺族の許可を正式にもらった上で出された本であることがわかり、凄い!と思うと同時に安堵もするのです。いや、それでも一握りの罪悪感のようなものも感じるのですが、大丈夫。後書きの前に置かれた「コーダ」の章で、著者によって舞台裏が明かされていて、手紙を書いた女性、そして男性その両者に著者は別々に会いに行き、それぞれ共に笑顔で写真に収まっているから。

写真で女性が着用しているTシャツはバーンスタインが最後となる7度目の来日で関わった札幌PMF(Pacific Music Festival)のもの。そのことに気が付けば再び目頭が熱くなることは必至。電車の外を見て涙をこらえる。ほお、西荻窪駅通過中やね。

クラシック音楽ファンなら読んで絶対に損しない大傑作なので今すぐにポチられる事を熱烈におすすめ。

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