ブリテンの戦争レクイエムは1962年に初演、1963年に世界初録音がなされ、キューバ危機で世界が揺れていたような頃のことであった。そんな世界的な情勢もあってのことか、レコードはなんと発売からたったの5ヶ月の間に20万枚も売れたという。
いまでは全く考えられないような話ですわ。しかも、なんとそのレコードには少年合唱団の名前がクレジットされていなかったそうで。これまたいまでは全く考えられないような話ですね。
歌っているのはロンドンの名門ハイゲート校の少年たちだったそうですが、先週の木曜日に、その録音に参加した当時の若者15人が再結集し、60年ぶりに録音の思い出を語りあったという、なかなか味わい深いというか、美談、とまではいわないにせよ、いや、やっぱり美談かな、なんか人生、みたいな気持ちになるお話でした。
なぜ集まったのかというと、録音をリリースしたデッカが新聞に「当時の合唱団メンバーを探している」という広告を昨年の12月に出したから。その結果15人が集まったと。
詳しいことは本文をお読みいただければと思うのですが、なかなか過酷な体験だったそうで、終わった時には終わって良かったと思ったそうですが、振り返ってみれば素晴らしい体験だった、と語った人もいると。
偉大なソプラノ歌手ヴィシネフスカヤが、少年合唱団と同じバルコニー席に座らされたため(ほかのソリストつまりピター・ピアーズとフィッシャー=ディースカウは指揮者のそば、通常ソリストが立つところにいた)、差別だと感じ、激怒し、合唱団と一緒にするなという雰囲気が満載だったと。
少年たちにはけっこう衝撃的な体験だったにちがいない。大人には複雑な事情があるんだぜ。大人ってこわいね、そうだね。
デッカはブリテンの指示も入ったリハーサルの録音も発見したそうで、合唱団に対して「朝一番の練習だということはわかっているが、そう聞こえないようにして欲しい」とか「そんなにナイスな感じでは歌わないでほしい、これは忌まわしい曲、現代音楽なのだ」と語ったとあります。
60年前の少年たちの再会はとても素晴らしい経験となったことでしょう。忘れていた細かいことも、お互いの記憶から補完し合って。
それにしても新作が20万枚売れるとか、裏山の二文字ですなあ。儲かったんだろうなあ。
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写真のど真ん中にいるのは作曲家のサー・ジョン・ ラター(Sir John Rutter)ですね。