21世紀のメトロポリタン歌劇場はピーター・ゲルブとともにありました。2006年に第16代メトロポリタン歌劇場の総裁に就任し、なんのかんのとありまして、コロナもあれば戦争もあり、コロナ中には映像で頑張ったりしたし、新作を頑張ってみたり、中東にレジデンスに行く計画を発表したり頓挫したり、まあ劇場運営、しかもメトロポリタン歌劇場クラスの世界トップとなると誰にでも務まる職ではないことは容易にわかりますね。
どんな路線をとったとしても批判され、どんな路線をとらなかったとしても批判される。誰を起用するかについても、我も我もと願う人たちが大勢いて、その関係者はもっといて、利害関係が複雑だし、音楽家たちもやいやい言うだろうし、指揮者ともうまくやっていかねばならぬ。
そう、これは政治家と同じなのです。ミニ総理大臣なのです。なにをしても違う意見の人から注文がつく、そういう損な役回りなわけです。だが、それでもなおへこたれぬ鉄のメンタルが必要で、働いて、働いて、働き抜く必要がり、私のようにくよくよと考えるタイプ、すぐにあーしんど、というような体力のない人間にはいっこうにつとまらないのです。シクシク。
2030年に契約が切れて、その段階で引退する、ということを公表した。ゲルブは1953年うまれなので77歳で引退する。
77という数字は大きいのか小さいのか、はたまた2030年まではやりすぎかそうでないか。そういう議論もあるでしょう。しかし何にせよ人はいつか去らねばならず、後進に道を譲らねばならぬのです。とんでもないストレスのなか24年間も勤め上げんとせむその体力と精神力には、敬意を示すべきなのではないかと思います。
次はどなたがおやりになるのか。早くもウォーミングアップを始めたようだ、というお方もおられるでしょう。既定路線で行くのか、意外な顔が飛び出るのか。
経営が厳しいメトロポリタン歌劇場ですが、我こそは立て直してみせまっせ、という野心をお持ちの方がきっと来られるのであろう。やはり世界を代表する劇場とはいえ、やはり運営するのは人ですから、ゲルブとは違う色、好みが出てくるのだろうと思いますね。


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