私はこのブログで再三再四、再五の再六ぐらいしつこく、ひつこく語らせて頂いていますが、譜めくりという仕事は、世界で最も困難な仕事の一つであると言えましょう。
なんでこんなことを今また書いているのかというと、エリザベート国際コンクールですね。連日の好演佳演でブリュッセルのコンサートホール、BOZAR(上の画像が外観です)は沸いています。BOZARっていうのはフランス語のボザール(beaux arts=美術とか美しい芸術の意味)の音を違うスペルで書いてるんだよ。賢くなったね!やったね!
このコンクールでは、ファイナルの課題曲の一つとして、誰も見たことのない新曲を、幽閉された空間で、誰の指導も受けず一週間で仕上げろよという鬼畜なやつがあるんですね。今年はミュージック・フォー・ザ・ハート。クリス・デフォールト作曲。
まあほんでその一週間で暗譜しちゃうっていう猛者もいるらしいですけれど、たいがい楽譜を見ますよね。そらそうよ。そうすると何が必要?譜めくり・・・・・・だよね。いまどきのみんなはiPadでの演奏も増えてますけど、このコンクールの特殊ルールによってiPadで外部と通信しちゃったらまずいからiPadは禁止なんだと思う。だから全員、紙の楽譜なんやで。
しこうして譜めくりが必要となるわけだ!!ドーン!!新曲だからめくる人にとっても当然知らない曲だ。そんなとき、譜めくり作業はとてつもなく困難を極める。
だってそうでしょう?知らない曲をめくるということだけで大変なのに、めくられるピアニストの運命を譜めくり人が握っている訳だ。うっかり譜めくりがミスって音楽が乱れたり止まっちゃったりしたらどうなる!
おいワレ、ごめんで済んだら警察いらんねんぞ。
・・・・・・そういうことです。
だからものすごい負担がかかってるわけ。今回もこれまで8人のファイナリストが演奏しまして、ここまで譜めくり人は2名が登場しておりますが、彼らの緊張がこちらにも伝わってくる!!やばっ!もうすぐやっ!ってあわてて立ち上がっている姿を何度見たか!!オーマイゴッド。
反対に、立ち上がったものの、まだやで、という時も危うい。ピアニストの集中力が乱れる、余計な負担がかかる。なに?数をこなしてきてめくる場所がだんだんわかってきた?それは危ない!!そういう余裕が事故を誘発することもある。集中アンド集中。
さらに、自分オリジナル、とでも言いましょうか、楽譜を切った貼ったしているピアニストの場合、譜めくりはさらに危険だ。まったくもって、どこでめくるかわからなくなるからだ。
私があそこに座っていなくて良かった・・・。心の底からの安堵の気持ちで毎日ありがたく客席に座らせて頂いている。どうか、皆様、譜めくりをしてだすっている勇気ある若者にも盛大な拍手を送っていただきたいと思うものなのです。
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