ニューヨークのメトロポリタン歌劇場は資金が不足していて厳しい。チケットの売り上げも伸び悩んでおり、コロナ前は券倍率が75%程度あったところ、いまなお72%にとどまっているそうです。また割引チケットも多く出まわっているようで、実際の興行収入は60%に低迷しているとのこと。原価率はいくらなのという質問もあるかもですが、この業界は原価率が高いことでも知られております。60%だと全然追いつかないのであります。
そこで。
強いのはオイルマネーであります。お金が欲しいメトロポリタン歌劇場と、お金はあるがソフトが欲しい両者の思惑が(ある程度以上)一致。2028年から5年間、毎年冬に3週間、サウジアラビアで公演をする、また地元のオペラ歌手、作曲家、演出家、デザイナー、技術者などへの研修も行う契約を結んだという話です。
金額は明らかにされていないものの、ニューヨーク・タイムズ紙によると、メトロポリタン歌劇場は1億ドル以上の収益を得ることになるのだそうです。コロナ以降、財政が厳しいメトロポリタン歌劇場は、基金をなんどか取り崩しており、結果的にその総額は合計1億2000万ドル、基金のおよそ3分の1もの額に及んだのだそうです。
この1億ドル以上という収益には原価が含まれているのか、それとも粗利なのか。もし粗利だったとしたらとんでもないことであります。いずれにせよ、この契約により少なくとも2032年までの財政需要のかなりの部分がカバーされる、ということですから、かなりのインパクトを持つ金額であることは間違いがございません。我々一般庶民には想像もつかないことです。
それにしてもサウジアラビアはヨーロッパ各国に積極的な投資をしているようで、例えばパリのポンピドゥーセンターの改修に5000万ユーロ、かかる費用の20%もの額の投資をしているようです。
サッカーもそうですが、オイルマネーは強烈ですね。これがいいことなのかよくないことなのか、それを簡単に言うことはできないかもしれません。疑問はいろいろあろう。それは払拭できるものではない。だが、お金がないことには事業は回らないというのも事実であります。世の中には大人の事情がいろいろあります(大人の事情、で片付けていいのかどうか?)。
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