フェニーチェ劇場をめぐるごたごたは続く

いや、昔からヴェネツィアは高い高い、って言われてまして、ホテルも高いし物価も高い、それはなんでかっていうと、観光地だし、水の上の街でございまして、不思議なつくりをしているからでして、まあなんのかんのとありますが、人々を惹きつけてきた街であることは間違いがございません。

高いといえばしかしなんですかねこの円安は!!

えっ、円安なのに高いってどういうこと。

私たちはどんどんお金を失っている。どうすればいいでしょうか。海外からの招聘企画は難しいどころかもう無理になりつつある、そういう会話が現実になされている時代であります。

クラシック音楽というもの、そもそもがヨーロッパ発祥の文化ですが、世界的にそれなりに広く人気のある文化でもありまして、極東の国日本でも、19世紀末以降、愉しまれてきました。しかし、あらゆる輸入業が仕入れ高に苦しんでいるなか、クラシック音楽も例外ではありません。支払いが外貨建てであることはしばしばなのですが、ユーロどんだけ値段上がってるんですか。ポンド、どんだけいくんですか。ドルはどこぞへ。これで輸出業やインバウンドが栄え、株価が上がればそれでオッケーとか思っている方々、なんとか頼んます。輸入業のほうも向いておくんなまし。いまは外貨を稼ぐしかないのか。円安反対!!

勢いでまた書きますがホテル代は爆上げ続行中。国際渡航費も爆上げが止まらず。昨日予約したビジネスクラスのチケットなんて6枚で100万超えましたから。コロナ前の倍額ですね。1枚50万円だったら300万で済むところ600万円。クラシック音楽業界は非常に小さな予算規模で動く産業です。300万円も原価が違ったら利益は完全に、文字通り木っ端微塵に吹き飛ぶのであります。じゃあどうする?売値を上げる?するとどうなる?買い手がいなくなる。悪循環以外のなにものでもないです。持てる者はますます富み、持たざる者はますます貧する。

あじゃぱー。

ほんでヴェネツィア。政治を音楽に持ち込むのはふさわしいことではないとされますが、ヴェネツィアの名門、フェニーチェ劇場は大揺れに揺れていて、それはなんでかというと、政治で動かさんとされているから。劇場の音楽監督に、これまで劇場と接点が全く(全くではないのかもしれませんけれど、事実上全く)ない若い女性指揮者が、政治家の力でねじ込まれたからで、指揮の力量は不明ながらも、これはいくらなんでも乱暴ですね。せめて一回は共演してたほうがいいんじゃないですか。控えめに言って時期尚早。

指揮者が音をださないから、一般の聴衆には良し悪しがそこまではっきりとわからないからこそ可能なパワープレイですね。また、父親がネオファシズムの元党員で、メローニ首相のもと音楽顧問に任命された人物ということで、政権に近い、ということも関係があるのでしょう。劇場の現場、一番影響を受けるのはオーケストラなわけですが、オーケストラを含む現場の組合は音楽監督任命を取り消すよう、改めて要求。

というわけで10月17日のヴォツェックはストで中止。19日以降の残り4公演は今のところまだチケットが買える状態になっていますが、上演されるのか。なお、予定されている指揮者はもちろん渦中の人ベネツィではなく、マルクス・シュテンツです(そもそもヴォツェックの指揮者は実力だけでなく相当な経験を積んだ方でないと難しいですよね)。

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