今年の春日本でもさよならコンサートを開催していたドイツのメゾソプラノ、ワルトラウト・マイヤーが2023年10月20日、ベルリン国立歌劇場で最後の舞台に立ちました。R.シュトラウス《エレクトラ》のクリテムネストラ役で。67歳。
Waltraud Meier Retires from Opera Stage – Opera Wire
この演出はもともとエクサンプロヴァンス音楽祭で2013年に製作されたパトリス・シェローによるもの。シェローは初演から数週間後にガンでなくなってので、最後に演出した作品ということになる。そして今年は没後10年にあたるのでこの作品の上演が決まった、と国立歌劇場のサイトにはありました。没後10年だからこそマイヤーは出演したのかもしれないし、没後10年だからこそマイヤーに依頼があったのかもしれない。
マイヤーのオペラ出演は50年近くに及んだということで、ものすごいことですね。お疲れ様でした。ニューヨークタイムズに長いインタビュー記事が出ていて、いろいろと面白いことを語っていたので少しだけご紹介したいと思います。ニューヨークタイムズはこういう面白い記事をぶっこんでくるんで、ほんで有料と言っても月1000円ぐらいなんで、課金なされてももよろしくてよ。
「作品を傷つけるような新演出は個人的に避けてきた。そして「ノー」という素晴らしい言葉がある」強い。
歌おうと思いながら歌わなかった役で後悔している役はありますかという質問に対して「契約書にサインしていたのに歌わなかったことが2回ある」、これは興行主泣かせのコメントですね。欧米では契約書は相当きつい縛りになるんですけど、だからこそ、特に歌手については契約書を早々に作ってお互いにサインをするんですけど、それでもなお、辞めちゃうっていうのは相当なことです。強い。
一つはスカラ座、《ワルキューレ》のブリュンヒルデ。もう一つはベルリン・ドイツ・オペラの《サロメ》。「サロメを歌うのは銀色の声でないといけない。私は銅だ。いま銀色のシュトラウスの声はあまりない。」自分の声を銅とする表現が強そうで素敵。
そして大きな声を聴衆が好むのは悲しいことだともいっていますね。大きな声量が音楽なのではなく、洗練が必要だと。圧倒的な声量も大事かもしれないが、音楽はフォルテだけではなく、メゾピアノ、あるいはピアニッシモといった部分にも命がある。そこは常に大事にしたいですね(日本では過剰に大事にされがちかもしれませんけれど)。
長い間お疲れ様でした。
コメント