名物というか、あそこには必ずあの人がいるっていうの、ありますよね。いつも変わらぬ姿を見ること、別に仲良くなって会話をするわけでもないけれど、そこにいつものあの人がいるというだけで何となくちょっとした安心感というか、どこかほっとする、みたいなのって。
自分の思い出だと、例えば京都伊勢丹の地下の魚売り場には「魚買ってくださーい」「さかなさかなー」と歌うように叫ぶおばちゃんがいまして、いつ行ってもいまして、とてもいい声だった。20年ぐらい前の話だけれど。
あとは、目黒のとんき(とんかつやです)に行くと、あそこは完全に分業になっていて、同じ人がいつ行ってもひたすら同じ作業をしている。注文取るおっちゃん、衣を作る人、揚げる人。それを見るのが素晴らしく気持ちが良い体験です。キャベツのおかわりのおっちゃんとか、ご飯と豚汁を運んできてくれるお姉さんとか、元気でしょうか。うん、こんどとんきにまた行こう。
デトロイト交響楽団には1989年からずっと34年間、警備員として働いていたおっちゃんがいまして、そのおっちゃんが69歳でいよいよ引退するということになったそうで、セレモニーが行われたということです。地元でニュースに採りあげられるとか、ほんと素晴らしいことだ。おっちゃんの赤い服に赤い帽子がめちゃクール。
どうしてもコンサートというと、スター指揮者だのスターソリストだのに注目が行くのですが(そしてそれは当然のことでもあるのですが)、こういう縁の下の力持ちの存在無くしては成り立たないのである。おっちゃんがにらみを利かせた結果、コンサートがつつがなく行われてきたのである。
そういう存在に対し、楯やトロフィーをお渡ししてっていうの、最高ですやん。日本では警備の方々というと別会社に委託しているケースも多く、なかなかこう、チーム、仲間、という感覚が生まれにくいかもというか一体感が生まれにくいのかもしれませんけれども、そうは言ってもこういう話ってあちこちであるんだろうし、皆が最後に笑顔で送り出すっていうのはとても素晴らしいことだなと思います。
デトロイトのおっちゃんは引退後、ひ孫にフットボールのコーチをするのが楽しみ。若者のために役立ちたいとのことであります。
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