訃報:ヘルムート・リリング。ドイツの指揮者。92歳

リリングがなくなりました。享年92。ドイツの音楽家。昭和世代には特に親しみのある人物。特にバッハの解釈で知られ、約200あるカンタータ全てを初めて録音した指揮者。バッハのカンタータは、若い頃にふれて感動したが、入手できるレコードは15枚ぐらいしかなかった。30曲か40曲を録音した段階で、本当に素晴らしい音楽を探究していることに興奮し、あるとき全部を演奏してみようと思った。というのがきっかけで全部をやりましょう、ということになったのだそうです。

その結果、数十年かけ170枚のディスク、1000曲を超えるバッハの宗教曲として結実したと。すごい熱意ですね。それが当時は実現出来るだけの環境があったというのも素晴らしいことだと思います。そのあとアーノンクールやらレオンハルトやらが現れて、先進的だと思われていたリリンクは時代遅れと思われるようなこともあったが、古すぎず新しすぎず、中庸を歩み、バランスの美を進んだのであります。

1933年うまれ。まだ学生だった1954年にゲッヒンガー・カントライ合唱団を結成、そしてその伴奏として1965年にシュトゥットガルト・バッハ・コレギウムを結成、2013年まで両団体の指揮者を務めた。少なくとも100回、たぶん300回はマタイ受難曲を四季した。

実はロマン派の音楽や現代音楽の演奏にも積極的にで、リストの《キリスト》、フランクの《至福》、オネゲルの《祈りの上のジャンヌ・ダルク》やリーム、グバイドゥリーナ、タン・ドゥン、ペンデレツキなども演奏した。

もちろん、専門はバッハで、ニューヨーク・タイムズの訃報の最後には「バッハの専門家であることは、お好きですか?」という質問に「もちろんです」、「光栄です」と答えた、と結ばれていて、人生をかけて打ち込むということの偉大さというか、その言葉の重みがズドンと来ます。素晴らしい人生だったと思います。ご冥福をお祈りします。

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