アンブロネ音楽祭訪問記

先週はアンブロネ音楽祭に行ってきました。アンスティチュ・フランセが主催する「フレンチ・アーリー・ミュージック・フォーカス」というイベントにご招待いただいたのです。

アンブロネってなんなの。地名です。どこなの。フランスです。フランスのどこなの。リヨンから右へバスで1時間ぐらい行ったところです。右っていうのは西です。日本人は右と言うと西をイメージするからね。しかしこどもたちがなかなか右と左を理解しないって言うのは不思議なことだなといつも思いながらみています。みぎ?みぎってどっち?こっち?そっちは左や!!!

アンブロネの人口はおよそ1500人ぐらいらしいです。あれ、Wikipediaには2800人って書いてあるけど、まいっか。農業大国フランス、もちろんまわりは農場です。牛さんがもーと啼き、ちょうがひらひらと舞います。さてクイズ、お母さんの病気は?はい!盲腸!!ブブー、風邪でした。農場のおじさんたちがライフルを構えていて、朝ジョギングをしているときも遠くからライフルの音が聞こえたのは牛追いのためでしょうか。

うしはモーと啼き、ちょうがひらひらと舞う

気温は遙かに低く、朝は一桁台、日が昇るのも遅く、日の出は7時半、とかそういう感じでした。みなさん遅起きさんなんで、私が朝6時半過ぎに朝食会場に行っても誰もいない、そんな感じ。そんなところにドーン!と新しく建っているBo Hotelsはお部屋も広く、新しい建物の臭いがしてよかった。

草原に忽然と現れるBO HOTELS

さて、そのアンブロネという村?コミュニティ?の中心、9世紀ぐらいに建てられた修道院を使って行われているのがこのアンブロネ音楽祭で、1980年からといいますから、もう45年も続いている。ジョルディ・サヴァールやレザール・フロリサンといった大物たちも早くから常連で参加していたそうです。

ミュゼットを演奏したおっちゃん(一番左)もバリバリいけている

そこにヨーロッパ中の古楽音楽祭やコンサートホールの人たちが集結!若いタレントを発見しヨーロッパエコシステム、つまり、みんなで若者たちを一緒に呼ぶことでよりカーボンなんとかがフリーであったりエコフレンドリーであったりとかそういう感じでして、極東の私のところにもドンドン若者たちがやってきてはプレゼンする、スピードミーティングがあり、それに対するフィードバックをしたり、ディスカッションをしたりと、あーこうやってヨーロッパの音楽界は回っている、受け継がれていっているのだというのを身をもって体験するというか、大変興味深い時間でした。音楽事務所が回すだけやないんやで、っていう。ロンドンの事務所が、みたいな話題が出たりして、なるほど、ロンドンの事務所、という表現はおもしろいな、距離感がこの人たちにもあるんだろうな、と。

コンサートもいろいろともちろん聴かせて頂きまして、修道院でわーん、と豊かな残響のなかで聴くバロックは気持ちが大変よろしかったです。全公演、テレビ収録が入っていてそれもすごいなと思ったんですが、パリのオペラ座でヘンデルのオペラを上演中のラファエル・ピションとピグマリオンの皆様も、オペラの空き日にやってきて、日帰りだったそうですが、音楽祭の大団円!ラストコンサートとして「Welt, gute Nacht!」(世界よ、おやすみ)、という超絶プログラムを演奏しまして、これが控えめにいって最高でした。

ラファエル・ピション指揮 ピグマリオン「Welt, gute Nacht!」

100分間、休憩無し、ほとんど知らない作曲家というプログラムながらあまりに強烈で私は椅子に縛り付けられたようになって聴いていたのでした。なおWelt, gute Nacht というのはJ.C.バッハの作品で、プログラム全体で有機的に非常に効果的な場所に置かれていて、それ単体でも目頭が熱くなる!!!たぐいのものでしたが、なんと美しい。いや、ドゥビエイユほか歌手の皆様が素晴らしかったからというのもありますが、世界に別れを告げるこの曲を聴いて後ろの女性、号泣してたで。ピグマリオンはもっとしっとりとゆったりしたテンポで歌っていましたが、Vox Luminis による音源を見つけたのでどうぞ:

この超絶コンサートの翌日、パリに戻りましてピグマリオンの事務局の人とお話をしましたけれど、オペラの合間にコンサートするとかよくするんすか、って尋ねましたら、滅多にないかも、と言っていました。それだけ彼らにとってもアンブロネ音楽祭というのは特別な存在なのだという事かもしれません。

若いタレントたちとの出会いに加え、世界各国の主催者の方々との情報交換も極めて有意義であったと申し上げたい。貴重な機会を頂いたアンスティチュ・フランセに感謝するとともに、日本人文字通り一人もいませんでした!なアンブロネは素晴らしいところだったので、来年とかぜひみなさん寄っていってみてください。リヨンからすぐです(すぐでもないけど)。

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