【特集】来日直前!アリス・アデールにインタビュー

ツアー日程・概要

2024年
2月12日[月・祝] 14:00 武蔵野市民文化会館小ホール(東京):バッハ [完売]
2月17日[土] 14:00 武蔵野市民文化会館小ホール(東京):フレンチ [完売]
2月18日[日] 15:00 ハレ・ルンデ(名古屋):フレンチ 絶賛発売中!

※各ホールの公演詳細およびチケット予約は上記各会場のリンクに飛んでご参照ください

予定プログラム

バッハ・プログラム

・J.S. バッハ:
    フーガの技法 BWV1080 全曲(途中休憩無・約110分)

2月12日[月・祝]武蔵野市民文化会館小ホール(東京)

フレンチ・プログラム

ドビュッシー:《練習曲集》より
   「半音階のための」
   「対比的な響きのための」
   「組み合わされたアルペッジョのための」
ラヴェル:《鏡》より
   「悲しき鳥」
   「海上の小舟」
   「鐘の谷」

---休 憩---

フィリップ・エルサン:
    《エフェメール》全 24 曲

2月17日[土]武蔵野市民文化会館小ホール(東京)/2月18日[日]ハレ・ルンデ(名古屋)

いよいよ来日が迫るアリス・アデールにインタビューを敢行!

とうとう、ついに、やっと、なんということか!来月、初の来日を控えるフランスのピアニスト、アリス・アデール。東京公演は2公演がすでに完売しており、人気と関心の高さが伺えます(名古屋公演は絶賛発売中です!)。そんなアデールに突撃メールインタビューを実施!日本への思い、フーガの技法への愛、エフェメールのことなどを語って頂きました。真摯な答えに大きな感銘を受けると同時に、演奏がますます楽しみになってきた、とここに告白せざるを得ません。

チケットをお持ちの皆様はどうか公演を楽しみにしていてください。そしてチケットをまだ買っていないというあなた!そう、そこのあなた!あなたです!!あなただよ!!あなたは、どうか万難を排して名古屋の御器所駅(ごきそ)へGo!していただきたい。

それではインタビューをお読みください。

アリス・アデール初来日直前インタビュー

Q日本に来られるのは初めてでしょうか?

アジアに行った事はありますが、日本は初めてです。

Q日本や日本の文化についてはどのような印象をお持ちですか?

いっとき日本の映画ばかり観ていました。すっかり惚れ込んでしまったんです。溝口健二、小津安二郎、黒澤明はたぶん残らず観ました。ほかにも素晴らしい監督がたくさんいますが、この三人の映画は特に印象に残っています。また葛飾北斎が同じテーマで粘り強く何度も何度も描き続け、その真髄へと迫っていく、そのことにも強く魅了されました。日本の文化はとっても豊かです!もちろん武満徹をはじめとする作曲家たちも・・・。それから若い頃には禅にも強く惹かれ、何年か禅を学び、実践もしました。弟子丸泰仙に教えを乞うたのです。得がたい経験となって残っています。

Q今回の来日で楽しみにしていることは何ですか?

日本の聴衆の「聴く力」が素晴らしいといろいろな人から聞いていて、早く体験したいと思っています。

Qかつてデカーヴやフェヴリエに学ばれていますが、どのような事を学びましたか。フレンチ・ピアニズムはいまでも生き残っているのでしょうか。

ジャック・フェヴリエは印象派、たとえばドビュッシーやラヴェルなどと近いところにいました。フェヴリエは信じがたい数の音のパレットや、ペダリングの妙について教えてくれました。天才的な錬金術師だったのです。

現代にも非常に優れたピアニストはとてもたくさんいます。でも本当の音を出せる人はごく僅かでしかありません。

Q その後ウィーンへ行き、ザイデルホーファーに学んでおられます。なぜウィーンに行ったのでしょう。日本でもウィーンという街は特別だと考えられていますが、あなたにとってウィーンはどんな意味で特別だったのでしょうか。

ウィーンの音楽生活や音楽教育はパリとは全く違うものでした。ウィーンでは文字通り「ノンストップで」音楽に浸りきっていました。学生はコンサートやオペラに無料で行くこともできたのです。ウィーンではピアノだけでなくオルガン、指揮、分析、室内合唱なども学びました。私の音楽への考えを開放し、私の基礎が形作られたといってよい数年間です。

Qザイドルホーファーはフランツ・シュミットやシェーンベルク、ベルクなどとも交流があったと聞いています。彼らについても話をすることがあったのでしょうか。

ザイドルホーファーとはよく、ベートーヴェンの小径(Beethovengang)にあるワイン酒場(ホイリゲ)に行き、できたての上質な白ワインを飲んだことを憶えていますね・・・・・・。

Q 20世紀フランスの音楽をたくさん演奏されてきました。メシアンやジョリヴェといった偉大な存在の思い出話を少しばかりお教え頂けませんでしょうか。

メシアンのことはとてもよく憶えています。

ドイツ軍の収容所で《世の終わりのための四重奏曲》をどれだけの時間をかけて書いたかを教えてくれました。あるいは《幼子イエズス》に関するメシアン自身の見解、メシアンが書いた宗教的な文章、あるいは宗教から受けたインスピレーションがいかに人々からバカにされたかも。とても傷ついたと言っていました。

メシアンからはいろいろな感銘を受けました。屈託のない挨拶、穿いていたスリッパ、あるいは完璧に削られた鉛筆が並んだ机であったりといったことからさえも。

メシアンの「音」に関する要求はとても高いものでした。音に含まれる全てのスペクトルを聞く、ということへの要求がとてつもなく高かったのです。

一方、私がメトロノームのようなパッセージに関して質問をすると、メシアンはとても控えめに、そしてちょっと恥ずかしげに、正しいテンポとは何なのか、それを語るのは得意ではない、と答えました。

Q《フーガの技法》を勉強し始めたのはいつのことだったのでしょう。

《フーガの技法》をいつ勉強し始めたのかは憶えていません。心身共に調子が悪かったある夜が開けたあと、一気に作品に飛び込み、本気で学び始めました。そして私はこの作品と文字通り日々一緒に暮らしたのです。《フーガの技法》は私にとってかけがいのないものであり、生命線であり、再生の力となりました。この曲を完全に暗譜するのにほぼ2年がかかりました。すべての声部をひとつひとつ憶えていったのです。私の身体の細胞すべてが、この作品によって培われてきたと言っても過言ではありません。

Q《フーガの技法》には演奏する楽器の指示がありません。ピアノで演奏することは正しいことなのでしょうか。もしもピアノでなければどの楽器が最もふさわしいでしょうか。

作品をしっかり分析すると、明らかに両手を用いる鍵盤楽器のため書かれている、ということがわかります。鍵盤ですべてが実現でき、全てが指に収まるのです。おそらくバッハ自身が好んで演奏していた、クラヴィコードを想定していたのではないかとも思います。

Qこの曲は未完ですが、あなたは未完の音符で演奏をとめますか、それとも補筆された最後まで演奏されますか。

私はバッハの自筆譜を尊重します。欠落しているページは失われてしまったのか、もしくはバッハが完成させなかったのかはわかりません。この曲の最後の部分はバッハの生涯最後の時期に書かれており、その頃バッハは失明しています。このフーガにバッハの名前、つまりB/A/C/H(シ♭・ラ・ド・シ♮)が出てくるという点に私は圧倒されます。このフーガを弾くとき、私は親密な瞑想のなかにあり、謙虚さに満ちあふれ、この瞬間を生きている事に感謝するのです。

Qこの作品は長く、聴衆にとっても理解が簡単ではありません。聴くに当たってのキーポイントや、理解の助けになる要素があるでしょうか。

わからないですね・・・・。飾りっ気のなさ、虚飾のない状態をどれだけ欲するかによるのではないかと思います。フーガはそれぞれスタイルが異なっており、各声部の美しさは静かな感情を引き起こすもので、ほとんど神秘的なレベルです。この曲は「気晴らし」や「娯楽」ではなく、人間性の至高の可能性を体験することなのです。

Q フィリップ・エルサンの《エフェメール》という作品について教えてください。

生命力、イメージ、あるいは詩が溢れた絵画のような音楽です。鐘の音、霧、雨つぶ、空を飛ぶ鳥たち、忘れていた記憶、楽器の可能性を超えた素材があちこちにあります。

●YouTube:アリス・アデールによるエルサン《エフェメール》↓

Qこの曲を日本デビューに選んだ理由はなんでしょうか。

私は何かを伝えたいというよりも何かに敬意を払いたいとより思っている、とだけお答えしましょう。

Q このような表現は正しくないかもしれないのですが、俳句は日本語や日本語の響きと密接に関わっており、翻訳するのは極めて困難、むしろ不可能ではないかと考えます。とはいえ、エルサンはフランス語訳に基づきこの作品を書いた。少し不思議な感覚を私は抱きますし、どのような響きがするのかと興味津々でもあります。

日本語でどのように響くのかは私にはわかりません。けれども私はここで用いられている俳句が好きです。どれもとてもインスピレーションに溢れています。

選ばれている俳句はどれもフィリップ・エルサンの詩的な世界にとても近いところにあると感じます。ノスタルジーや優しいユーモア、そして静かな絶望などがあるのです。

(了)

アリス・アデール初来日:日程

アリス・アデール初来日はいよいよ来月!再度3公演について記載致します。繰り返します。東京公演2公演は完売しております。名古屋公演チケットは以下のリンクからどうぞ!

2024年
2月12日[月・祝] 14:00 武蔵野市民文化会館小ホール(東京):バッハ [完売]
2月17日[土] 14:00 武蔵野市民文化会館小ホール(東京):フレンチ [完売]
2月18日[日] 15:00 ハレ・ルンデ(名古屋):フレンチ

後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

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