ツアー日程・概要
2024年
3月31日[日] 14:00 いわきアリオス(福島) Aプロ【残席僅少】
4月2日[火] 18:30 住友生命いずみホール(大阪) Cプロ
4月3日[水] 14:00 フィリアホール(横浜) Bプロ
4月5日[金] 19:00 浜離宮朝日ホール(東京) Aプロ
4月6日[土] 14:00 所沢市民文化センター ミューズ(埼玉) Aプロ【完売】
4月7日[日] 14:00 アトリオン音楽ホール(秋田) Aプロ
4月10日[水] 19:00 東広島芸術文化ホール くらら(広島) Cプロ【完売】
後援:ベルギー王国大使館
※各ホールの公演詳細およびチケット予約は上記各会場のリンクに飛んでご参照ください
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予定プログラム
プログラムA《オール・J.S.バッハ》
・フランス風序曲 BWV831
・平均律クラヴィア曲集第1巻より
第4番 嬰ハ短調、第14番 嬰ヘ短調、第19番 イ長調、第24番 ロ短調
・フランス組曲第2番 BWV813
・平均律クラヴィア曲集第1巻より
第15番 ト長調、第16番 ト短調
・イギリス組曲第5番 BWV810
3月31日[日] いわきアリオス(福島)/4月5日[金] 浜離宮朝日ホール(東京)/4月6日[土] 所沢ミューズ/4月7日[日] アトリオン音楽ホール(秋田)
プログラムB《フレンチ・プログラム》
・シャンボニエール:神々の話
・ルイ・クープラン:組曲 ト調
・ダングルベール:リュリの歌劇「アルミ―ド」によるパッサカリア
・ラモー:新クラヴサン組曲 第1番 イ短調
・フォルクレ:クラヴサン組曲第3番
・デュフリ:レ・グラース/フォルクレ/シャコンヌ
4月3日[水] フィリアホール(横浜)
プログラムC《ミックス》
・J.S.バッハ:フランス風序曲 BWV831
・平均律クラヴィーア曲集 第1巻より
第4番 嬰ハ短調、第14番 嬰へ短調、第19番 イ長調
・J.P.ラモー:新クラヴサン組曲 第1番 イ短調 より
アルマンド/クーラント/サラバンド/3つの手
・J.S.バッハ:・平均律クラヴィーア曲集 第1巻より
第15番 ト長調
・フランス組曲 第2番 ハ短調 BWV813
4月2日[火] 住友生命いずみホール(大阪)/4月10日[水] 東広島くらら(広島)
60年の歴史を誇る名コンクール史上初のプロジェクト!
オフィス山根が2024年春に手がけるプロジェクト、それが2023年8月に開催されたブルージュ国際古楽コンクール(ベルギー)の優勝者記念ツアーだ。世界最高の古楽コンクールと言われるこのコンクールを制したのは21歳(コンクール開催時)の非常に若いポーランドのチェンバロ奏者マチェイ・スクシェチュコフスキ(Maciej Skrzeczkowski、上写真の青年)だ。2001年生まれと聞けばなかなかに感慨深い。そう、21世紀生まれなのである。
ちなみにポーランド人に聞いてみても「これは難しい」と言われる噛みそうな名字だが大丈夫。落ち着いて「スクシェ」と「チュコフスキ」の2つに分けて考え、深呼吸をしてから2、3回も口に出せば問題なくすらすらと読めるようになっているであろう。そして一度なめらかに読めるようになれば、二度と間違うことはない。人の心理、そして能力とは実に不思議なものだ。
ブルージュ国際古楽コンクールとは何なのか
ベルギーの古都、ブルージュは9世紀にまでさかのぼることができる。世界遺産に登録された非常に美しい街だ。ここで1964年に第1回が開催され、以降ずっと開催されてきた世界で最も高い権威を誇る古楽器のためのコンクール、それがブルージュ国際古楽コンクールである。
このコンクールを通じて有名になった演奏家は非常に多い。コンクールのサイトのつくりが残念ながら非常にわかりにくく、そしてたぶんコンクールサイトには過去の入賞者一覧はないのだが、Wikipediaにいろいろとまとめられているのでどうか安心してほしい(安心するのは私だけとも言う)。チェンバロ部門でこれまでに優勝、あるいは入賞したなかなら世界的に著名な音楽家の名前を抽出して行くと、以下のようなものとなる。世界の第一線で活躍する超一流音楽家たちが多数いることに驚く。
1968年 優勝:トン・コープマン
1971年 優勝:スコット・ロス 特別賞:クリストファー・ホグウッド
1983年 優勝:クリストフ・ルセ 第2位:ピエール・アンタイ
1986年 第3位:オッタヴィオ・ダントーネ
1989年 第3位:ケネス・ワイス
1992年 第4位:イヴ・レヒシュタイナー
1998年 第2位:アーポ・ハッキネン
2001年 優勝:クリスティアン・ベザイデンホウト
2004年 優勝:バンジャマン・アラール
2007年 優勝:フランチェスコ・コルティ
2010年 第2位:マキシム・エメリャニチェフ
2012年 優勝:ジャン・ロンドー
2015年 優勝:ジュスタン・テイラー
2023年 優勝:マチェイ・スクシェチュコフスキ
なぜブルージュ国際古楽コンクール優勝者ツアーを実施するのか
ブルージュ国際古楽コンクールは「世界最高のコンクール」と言われながらも、これまでに優勝記念ツアーが日本で行われることはなかった。これは驚くべきことだ。どうしてこれまでなかったのだろうか、と不思議に思うほどである。だからというわけではなく理由はほかにもあってのことなのだが、私はコンクール開催の半年ほど前に事務局にメールをした。「優勝者を日本に呼べないか、できればツアーにして、優勝記念日本ツアーを開催したい。これはコンクールの長い歴史上なかったことではないだろうか」。
すぐに事務局長から返事が来て「素晴らしいアイデアだ」という。では計画しよう!とさっそく行動に移した結果がこの全7公演という素晴らしく充実したツアーである。東北から広島まで各地を回るこのツアーが、コンクールにとっての新たな歴史の一ページとなることを心より願うものだ。そしてマチェイ・スクシェチュコフスキという素晴らしい演奏家の日本における輝かしいキャリアの第一歩となることも。
コンクールの結果が出る前に実は懸念事項が一つあった、それは、コンクールから8ヶ月後のツアーとはいえ、ツアー予定の時期(つまり2024年3月末~4月前半)に別のコンサートが優勝者に入っていたら?というものだった。このような著名なコンクールで優賞するような人物はすでにプロとして活発に演奏活動を行っている人であることも多いし、特に3月31日はバッハの新暦での誕生日でもあり、すでに仕事が入っていますねん、なんという事もありうるのでは?
「そうなったら別の実施可能な時期を改めて見つけて、えいやっと動かすよりないですね」などと話をしていたのだが、結果として幸いなことにスクシェチュコフスキの日程はOKだった。こうなればあとはサクセスするよりない。サクセスしようぜ。
なぜ優勝者ツアーなのか
日本人は、と主語を大きくするのは問題かもしれないが、日本人はコンクールという言葉にめっぽう弱い。コンクールで優勝、という言葉に敏感に反応する。それだけ優れた何かを求める民族なのかもしれないと思う。それはたとえばショパン国際コンクールの優勝者、あるいは、チャイコフスキー国際の優勝者、というと如実に関心が集まる。
これをして、優勝者ばかりに注目が行くのはどうしたことか、という声の出ることもまた事実である。優勝者はそつなく平均的に優秀な演奏をする演奏者であることも少なくなく、ちょっと弱いところもあるが強烈なカリスマ性、スター性を所持している者が正当に評価されないこともあるからだ。だがそう言った批判の声もまた正しくないこともある。やはり優勝する者は厳しい審査員の耳で選ばれている。その耳が選んでいるのだから、その場にいる最も優秀な演奏家であることが多いのだ。
加えて私はこのコンクールのファイナルに現地で実際に接した者だが、ファイナリスト4名の演奏を聴いた段階で、最後に登場して演奏したマチェイ・スクシェチュコフスキが優勝するのではないか、いや優勝してほしいと思ったことをここに記しておきたい。
演奏がすべて終わり、審査委員たちが審査をしている間、からっぽの客席でコンクール事務局の女性と立ち話をした。「君は誰が優勝すると思う、君のお気に入りは誰?」と問われ、「最後のポーランドの彼だね」と答えたところ「自分も同意見だ」と返ってきた。会場の雰囲気的には3番目に弾いたウクライナ人奏者への拍手喝采がもっとも大きかったと感じたのだが、これはウクライナ頑張れ!そういう、応援の気持ちが会場の雰囲気をそうさせたのだ、と私は理解している(そしてそれはそれで非常に重要なことだと思う)。
優勝直後のマチェイ・スクシェチュコフスキ突撃インタビュー
ところで以下にマチェイ・スクシェチュコフスキが優勝を決めた直後に、会場のブルージュ・コンセルトヘボウで撮影した突撃インタビュー動画(1分15秒)を置いておくのでぜひご覧下さい。
もちろんウクライナの彼も大変優秀な演奏家だったことは間違いないが、その後に登場したマチェイ・スクシェチュコフスキの演奏はさらに鮮やかで、鳴らされる音から、どんなに技巧的なパッセージであれ、かぐわしい香りがゆっくりと立ち上っている、そのように感じた。であるからして、スクシェチュコフスキの優勝にはなんの疑問もなかったし、むしろ「勝つべき人が勝った」という思いが私を満たした。音を正確に鳴らすことは当然大切なことではあるが、単に音を並べただけでは香り立つような音楽にはならない。そこに芸術の奥深さがあるし、えもいわれぬ喜びもそこにはある。
で、結果発表の直前になって「ところで優勝者への賞状の授与は君がやるんだからね?」と事務局長に言われて「ハッ?なんでや、審査委員長が渡すでしょ普通」(委員長はクリストフ・ルセだった。ハイ、ゴロー!久しぶり!元気してる?と握手はしたが、審査委員長を差し置いて渡すか)と思ったのだが、悲しきは関西人の性である。ほいほいと涼しい顔ををして舞台にあがり、賞状を渡したのであった。ちゃっかりとコンクールの公式写真に私も写り込んでいるので、このページにも恥を忍んで開陳していることは公然の秘密である。
さあ、今年の春は、ブルージュ国際古楽コンクールの60年の歴史上初めてとなる、優勝者記念日本ツアーである。どうか皆様の近くで開催されるコンサートのチケットを買って、生きた古楽の最前線を愉しんでほしい。キックオフは3月31日、バッハの誕生日だ。
(文:山根悟郎)
Competition photos: © Joselito Verschaeve and MA Festival
2024年優勝者記念日本ツアー スケジュールと最寄り駅
2024年
3月31日[日]14:00 いわきアリオス(JRいわき駅) Aプロ【残席僅少】
4月2日[火]18:30 住友生命いずみホール(大阪環状線・大阪城公園駅) Cプロ
4月3日[水] 19:00 フィリアホール(東急田園都市線・青葉台駅) Bプロ
4月5日[金] 19:00 浜離宮朝日ホール(大江戸線・築地市場駅) Aプロ
4月6日[土] 14:00 所沢市民文化センター ミューズ(西武新宿線・航空公園駅) Aプロ 【完売】
4月7日[日] 14:00 アトリオン音楽ホール(秋田) Aプロ
4月10日[水]19:00 東広島芸術文化ホール くらら(JR山陽本線・西条駅) Cプロ【完売】
マチェイ・スクシェチュコフスキ プロフィール
2001年生まれ。ポーランドのチェンバロ奏者、フォルテピアノ奏者。ポーランド国内外の数多くのピアノやチェンバロのコンクールで入賞を果たしており、主なものとして2019年のミラノ国際チェンバロコンクールで第3位入賞、2023年にブルージュで開催されたブルージュ国際古楽コンクールで優勝、およびアウトヒア賞受賞。
ポーランド、ワルシャワのゼノン・ブジェフスキ中等音楽学校でモダンピアノおよびチェンバロをマレク・ブラハおよびベアタ・ポピスに学ぶ。現在はハーグ王立音楽院でキャロル・チェラジ、バート・ファン・オールト、ペトラ・ソムライに学んでいる。
2019年、ポーランド放送のコンサート・スタジオで、ウカシュ・ボロヴィチ指揮シンフォニア・ユヴェントゥスとロマン・パレステル作曲「チェンバロと10の楽器のための協奏曲」の録音に参加し、レコードデビューを果たした。
さらにスキップ・センペ、ピエール・アンタイ、ヴワディスワフ・クウォシエヴィチ、エルジュビェタ・ステファンスカ、カタジナ・ドロゴシュ、トビアス・コッホ、ニコライ・デミジェンコ、クリスティアン・ベザイデンホウト、クリストフ・ルセらのマスタークラスを受講するなど、さらなる研鑽を積んでいる。
主なレパートリーは、J.S.バッハ、F.クープラン、D.スカルラッティ、J.B.フォルクレ、J.デュフリ、C.P.E.バッハ、ハイドンなどの18~19世紀初頭のチェンバロとフォルテピアノ作品。加えてイギリスのヴァージナル楽派やフランス17世紀の作品やショパン、ブラームス、シマノフスキなど後生の作曲家たちの作品も演奏する。どのようなスタイルの音楽を演奏する場合であれ明瞭さ、美しく歌う音色、そしてニュアンス豊かなアーティキュレーションとシンプルなフレージングのバランスを重視している。